第三十二話 泳いだ後でその三
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「やっぱりね」
「でしょ?だからね」
「買っておいて」
「使い方も覚えておかないとね」
「現実の問題として」
「そうしておかないとね」
「そうよ、女の子ならね」
富美子も言ってきた、他ならぬ彼女も。
「そうしたところもね」
「ちゃんとして」
「そうしておかないとね」
こう言ってそうしてだった。
一華はこの日の夜こっそりとだった。
周りをきょろきょろと確認してから薬局の自動販売機で買った、そのうえで鞄にこっそりと入れてだった。
何か見付かったら駄目なものを持って帰ったかの様に帰宅してそそくさと箱を自分の机の誰も探さない場所に入れた、だが。
一個だけ抜き取って財布のやはり滅多に見ない場所に入れた、そうして何もなかったかの様に晩ご飯を食べたが。
母はその彼女を見て言ってきた。
「あんた何かあったでしょ」
「えっ、何かって」
一華は母の言葉にぎくりとした顔になって応えた。
「何もないわよ」
「いや、汗凄いけれど」
「それは梅雨でそろそろ暑いからで」
「違うでしょ、まああんたは犯罪はしないわね」
「それはしてないから」
「だったらいいわ、ただね」
母は娘をじっと見つつ言ってきた。
「あんた凄く嘘下手よね、昔から」
「そうかしら」
「今だってよ。明らかに隠しごとしてるし」
「それはその」
「言わなくてもわかるわ。けれどそれでいいのよ」
「嘘が下手で」
「素直ってことでね、平気で嘘吐く人よりもね」
そうした輩よりもというのだ。
「いいから」
「そうなのね」
「平気で嘘吐く人は信じらないでしょ」
「かなりね」
一華は鮭のムニエルを食べつつ頷いた、他には菊菜のおひたしにけんちん汁がある。
「そんな人は」
「そうした人よりもよ」
「嘘が下手な人の方がいいの」
「まだね、吐かないに限るけれどね」
嘘はというのだ。
「生きているとどうしても吐く時もあるけれど」
「嘘吐かない人いないわね」
「そうでしょ」
「それはわかるわ」
一華にしてもだ。
「やっぱり生きてるとね」
「吐く時もあるでしょ」
「隠しごとをしたりもね」
「あるのよ、ただ吐いていい嘘と悪い嘘があって」
「そこの見極めが大事なのね」
「あと隠しごともね」
こちらもというのだ。
「隠していい物事とよ」
「悪い物事があるのね」
「犯罪は駄目よ。あと不倫もね」
「そういうのはよね」
「けれど見られると恥ずかしいものとかは」
「いいのね」
「あんたは今回そっちみたいだけれどね」
具体的にそれが何かは母もわからないがそうしたものだと察してそのうえで自分の娘に対して話した。
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