第百二十四話 黄龍、娘を救うのことその五
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「これは。何とか」
「防げないのか」
「わしもそうしたい」
しかしだとだ。翁は白髪と髭に隠れている左目で光に包まれていく月を見て言った。
「だがこの状況では」
「常世を封じるしかない」
「だからだというのか」
「若し常世がこの世に出ればじゃ」
翁も苦さがその声に出ていた。
「全てが終わる」
「しかし。このままでは」
「あの娘が」
「させん!」
守矢は妹のところに駆ける。何とかして止めようというのだ。
「早まるな!何とかなる!」
「いえ、兄さん無理よ」
しかしだ。月は兄の言葉も振り切ってしまった。
そうしてだ。こう言うのだった。
「さもなければ常世が今すぐに」
「くっ、どうにもならないのか・・・・・・」
「兄さん、僕達はまた」
楓もだ。苦渋に満ちた声で兄に問うた。
「姉さんを犠牲にして」
「それは駄目だ」
守矢も必死だ。何とかしたかった。
しかしそれでもだった。今の月は。
兄に対してもだ。こう言うばかりだった。
「こうするしかないのですから」
「私達がいる!」
守矢は刹那も見据えていた。
「私達に任せろ。いや」
「いや?」
「せめて力を借りろ!」
こうも言うのだった。
「御前一人で何もかも背負い込むな!」
「私一人で」
「何故いつも一人で背負い込む!」
月のその性格をだ。守矢は責める。今は責めていたのだ。
「子供の頃から。いつも」
「それは」
「私がいる、そして楓がいる」
自分だけでなく弟のことも話に出す。
「それで何故だ。何故いつも御前は」
「私が巫女です」
だからだと言う彼女だった。
「ですから。それで」
「巫女でも何でもだ」
守矢も引き下がらない。だから言うのだった。
「御前は全てにおいてそうだった。何故いつも一人で全てをしようとする」
「人に。他の人に迷惑をかけることが」
嫌いだったのだ。そしてできなかったのだ。
それが月だった。だからこそだというのである。
「お兄様にも楓にも」
「迷惑に思う筈がない!」
守矢はまた叫んだ。
「私は御前の何だ!」
「お兄様は」
「そうだ、何だ!」
叫ぶのはこのことだった。
「言ってみろ。何だ!」
「お兄様です」
返答はもう決まっていた。既にだ。
「私の」
「そうだな。だから私は御前と共にいる」
そうすると言ってだった。彼はだ。
月の前に立った。そうして刹那と対峙する。既に剣は両手に持って構えている。
そのうえでだ。己の後ろの妹に言うのだった。
「刹那は私が倒す」
「そうしてなのですか」
「御前を犠牲にはしない」
断じてだ。そうするというのだ。
「いいな。それではだ」
「私は」
「死ぬことはない」
強い声だった。これ以上はな
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