令呪オークション その1
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六導玲霞の保護の後問題になった事がある。
彼女の令呪だ。
「買い取りますよ。
三画まとめて十億で」
こういう時に安く買い叩く事はしない。
六導玲霞はぽんやりとした声でそれに同意した。
「構わないわよ。
私にはどうせいらないものだったのだから」
娼婦になる前の背景がいい所からの没落だったので、地頭の良さと教養が令呪の放棄に同意したのだろう。
勘なのかもしれない。
「しかし、よく彼女を見つけましたね」
「神奈一門は元々彼女たちの支持があるんですよ」
東京のセーフハウスにて私はアンジェラと話す。
六導玲霞は隣の部屋で寝ており、それとなく日米の警備陣がセーフハウスの周囲で守っていた。
占い師一門としてでなく、高級娼婦一門でもある神奈は相良豹馬と同じ二流、下手したら三流の魔術師一門でしかない。
だが、その体で夜に君臨していた情報網と影響力はこの国において深く巣食っていたのである。
「いる所にはいるものね。
彼女、貴方の妹になるわよ」
姉弟子こと神奈水樹の決定に年上の妹ができる事が確定している私は苦笑するしかない。
それよりも、急いでこちらでする事があった。
「で、とりあえず覇権国家のカネで令呪を買い取りましたが、これどうします?」
「彼女をプレイヤーとして使う事はできないの?」
アンジェラのある意味当然の質問に私は首を横に振った。
英国で捕らえられた相良豹馬が何を召喚しようとしていたか分かったからだ。
「相良豹馬が召喚用に用意しようとしたのは、ジャック・ザ・リッパーが実際に使用したとされるナイフだったそうですよ。
彼はそのナイフで彼女を殺して原典再現を行ったうえで呼ぶつもりだったとか。
もちろん、彼女はこれを知らないし教える気もありませんが」
事務的な私の口調にアンジェラも顔を歪める。
この仕事人死にもある意味仕方ないが、かといってこれは良い趣味では決してない。
彼女をプレイヤーから外した理由がこれである。
「じゃあ、彼女の令呪はどうなるの?」
「いくつか推察できる事があるんですよね。
多分、令呪の部位が大事であって、マスターそのものが必要という訳ではないと」
冬木市郊外で見つかったバゼット・フラガ・マクレミッツが聖杯戦争関係者という事が分かった事で番外の動きはさらに激しくなっていた。
彼女が左腕ごと切り取られたという事は、つまり令呪のある部位だけでサーヴァントが動かせる可能性である。
「あと、これも推測ですが、この令呪移動というか譲渡が多分可能なんですよ」
「理由は話してくれるわよね?」
「……聖杯戦争の辞退もしくはリタイヤ者は聖堂教会が保護する事になっています
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