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麗しのヴァンパイア
第四百七十七話

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                  第四百七十七話  焦らない
 カーミラは着物の完成を神戸の屋敷において待った、その間泰然自若としてこれまで通りの生活を送っていた。
 それでだ、使い魔達に言うのだった。
「皆わかっているわね」
「はい、焦らない」
「こうした時は」
「決してです」
 使い魔達も皆落ち着いて答える。
「例え遅れてもです」
「多少そうなろうとも」
「決して焦らない」
「そうあるべきです」
「焦っても何もならないわ」
 安楽椅子に寝てシャンパンを飲みつつ話した。
「だからこそよ」
「悠然と待つ」
「そうあるべきですね」
「こうした時こそ」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「ましてここは日本よ」
「遅れることはない」
「予定通り出来上がるのが普通ですね」
「遅れても多少ですね」
「そうよ、間は充分取ったわ」
 パーティー、その着物を着ていく時までには間に合う様にしたというのだ。実際にカーミラは底まで考えていた。
「だからね」
「不安に思わず」
「そのうえで待てばいいですね」
「間違いなく間に合う」
「それも良質のものが出来上がりますね」
「そうなるわ」
 カーミラは落ち着いたまま答えた。
「だからね」
「今は待つ」
「そうするといいですね」
「ですから私達も焦っていませんが」
「このままでいいですね」
「むしろ焦るなら」 
 それならと言うのだった。
「私は注意していたわ」
「焦ってはならない」
「その様にですね」
「我々を注意されていましたね」
「そうよ、そもそも焦ること自体がね」
 それそのものがというのだ。
「よくないわ」
「そうですね、何事についても」
「そうあるべきですね」
「何時でも悠然とよ」
 そうせよ、こう言ってワインを飲むのだった。


第四百七十七話   完


                  2022・6・4
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