暁 〜小説投稿サイト〜
魔法使い×あさき☆彡
第三十章 わたしたちの世界、わたしたちの現在
[8/8]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
え、あります」

 というヴァイスの言葉に、アサキはドキリとした。

 心を読んだという自覚がないのか、ヴァイスはまったく気にした様子もなく続ける。

「仮想世界は、無限空間記憶層(アカシツクレコード)の時空位相以外は、現実世界とまったく同じ陽子構造式と時形で成り立つ世界です。その世界での個体要素つまり陽子配列そのままに、あなたたちは現実世界へと転生をした。……だからこそ、あなたたちはこの世界でも魔法が使えるのです」
「よく分かんねえけど……んじゃさあ、アサキはバカだけど世界最強の魔法使いだったから、それはこの世界でも同じってわけだな?」
「もちろん、上がいれば最強ではなくなりますが、仮想世界でのアサキさんと現在のアサキさんは、まったくの同一ですよ。ただ、まだ力を完全には取り戻せていないようですが」
「ああ、()(だれ)のクソにも苦戦したもんな。あん畜生、こんど会ったらボコボコにしてやれ、アサキ!」
「強さなんか、いらないんだよ、わたしは」

 アサキは苦笑した。

「おいおい、まだいってんのかよお、お前はさあ」
「だって……結局わたしは家族、(しゆう)(いち)くん、(すぐ)()さんを、救うことも出来なかった。他にも、たくさんの仲間たちを失った。わたしは、なんにも出来なかったんだ」

 仮想世界の中とはいえ、あれは、わたしたちには、現実だった。
 なのに、そのわたしたちの現実世界を、こともあろうにわたしは壊そうとすら、してしまった。
 強くなんかないし、強くある資格すら、ないじゃないか。

「あ……」

 仮想、世界。
 現実……
 わたしたちは……

「あ、あのね、ヴァイスちゃん、き、聞きたいんだけど」
「なんでしょうか、アサキさん」
「この、超次元量子コンピュータというのは、まだ、正常に稼働しているんだよね?」
「はい。どこにも異常は見られません」
「……わたし、目覚めたばかりのせいか、頭が回っていなかった。勝手に、世界が滅んだものと思ってた。仮想世界だったというショックは大きかったけど、それでもそれはわたしたちの現実なんだ、という気持ちも持っていたくせに、なのに、その現実はどうなっているんだということを、全然考えてなかった……」
「あ、そうかっ!」

 カズミと治奈が、二人同時に大きな声を出した。
 そして、今度は三人一緒に、こういったのである。

「まだ、我々の地球は、存在している」
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ