第三十章 わたしたちの世界、わたしたちの現在
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え、あります」
というヴァイスの言葉に、アサキはドキリとした。
心を読んだという自覚がないのか、ヴァイスはまったく気にした様子もなく続ける。
「仮想世界は、無限空間記憶層の時空位相以外は、現実世界とまったく同じ陽子構造式と時形で成り立つ世界です。その世界での個体要素つまり陽子配列そのままに、あなたたちは現実世界へと転生をした。……だからこそ、あなたたちはこの世界でも魔法が使えるのです」
「よく分かんねえけど……んじゃさあ、アサキはバカだけど世界最強の魔法使いだったから、それはこの世界でも同じってわけだな?」
「もちろん、上がいれば最強ではなくなりますが、仮想世界でのアサキさんと現在のアサキさんは、まったくの同一ですよ。ただ、まだ力を完全には取り戻せていないようですが」
「ああ、至垂のクソにも苦戦したもんな。あん畜生、こんど会ったらボコボコにしてやれ、アサキ!」
「強さなんか、いらないんだよ、わたしは」
アサキは苦笑した。
「おいおい、まだいってんのかよお、お前はさあ」
「だって……結局わたしは家族、修一くん、直美さんを、救うことも出来なかった。他にも、たくさんの仲間たちを失った。わたしは、なんにも出来なかったんだ」
仮想世界の中とはいえ、あれは、わたしたちには、現実だった。
なのに、そのわたしたちの現実世界を、こともあろうにわたしは壊そうとすら、してしまった。
強くなんかないし、強くある資格すら、ないじゃないか。
「あ……」
仮想、世界。
現実……
わたしたちは……
「あ、あのね、ヴァイスちゃん、き、聞きたいんだけど」
「なんでしょうか、アサキさん」
「この、超次元量子コンピュータというのは、まだ、正常に稼働しているんだよね?」
「はい。どこにも異常は見られません」
「……わたし、目覚めたばかりのせいか、頭が回っていなかった。勝手に、世界が滅んだものと思ってた。仮想世界だったというショックは大きかったけど、それでもそれはわたしたちの現実なんだ、という気持ちも持っていたくせに、なのに、その現実はどうなっているんだということを、全然考えてなかった……」
「あ、そうかっ!」
カズミと治奈が、二人同時に大きな声を出した。
そして、今度は三人一緒に、こういったのである。
「まだ、我々の地球は、存在している」
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