第三十章 わたしたちの世界、わたしたちの現在
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神から、白たる意思を植え込まれたといっても、それだけには成り切れない。……でも、そうもいっていられないですよね。この宇宙は、守らないと。そのための、努力はしないと」
「わたしたちに出来ることがあれば、力を貸したいけど。……ねえ、ヴァイスちゃん、宇宙を守るもなにも、現在、ええと……昔あった地球のような、生命の存在する星ってあるの?」
アサキの問いに、ヴァイスは即答した。
「おそらくは、ありません」
と。
「ないことの証明は難しいですが、エーテルの反応から見て、恒星、惑星、ほとんどの星は滅んで塵に帰し、新たに生まれてはいる様子はない。……でもね、宇宙さえあれば、可能性は残るんです。だから……」
「そうだよね」
なにに対して、そうだと相槌打ったのか、自分でも分かっていなかったが。
ただ、口をついて言葉が出ただけだ。
「なすすべは、残されていないのかも知れません。でも、やれることはやっていかないと。だから本当は、シュヴァルツたちとも手を結ばないと。争ってなんか、いられないのです」
シュヴァルツ、先ほど名付けたばかりの、黒服四人のリーダー格だ。
「協力して、なにか方法を探らなければならないはずなのに、でも、彼女は世界を終わらせたがっている。……お話した通り、彼女は黒の意思を植え込まれているために」
「世界を終わらせる、ってどうやって?」
アサキが尋ねる。
「手段は分かりません。まず狙うは、超次元量子コンピュータの物理的な破壊でしょう。無理ならばせめて遠隔からでも入り込んで、ソフトウェアつまり現在の仮想世界を消滅させる。理を跳ね返して奇跡を起こす、そんな可能性を持っている偉大かつ特異な存在を、この現実世界に生み出さないように」
「でも、手をこまねいている間に生まれちまったわけか。この現実世界に、アサキが。……そっか、だからあいつら執拗にアサキを狙っていたのか」
カズミは、納得といった表情を浮かべ、拳で判を押すように手のひらを叩いた。
「わたしなんか、別にそんな、たいした力なんか、ないのに」
「だからあ、もう謙遜すんのやめろっての!」
カズミは、げんこ作った右腕振り上げ、アサキへと近寄ろうとする。ふわふわ浮かぶばかり、全然移動が出来ないので、かわりに上着を脱いで振り回して、アサキの顔をひっぱたいた。
「いたいっ! 謙遜なんか、してないよ、わたし」
本心から思っていることだ。
自分はキマイラ、つまり臓器等パーツを合成して造られた人間ということだが、そんな実感などはないし、自分はただの、地味で泣き虫な、普通の女の子だ。
それに、それも仮想世界の中でのことだ。
もう、わたしもカズミちゃんも治奈ちゃんも、違いなんかありはしないじゃないか。
「い
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