第2部
ランシール
地球のへそ
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じ言葉が聞こえて来たではないか。
『引き返せ……』
『引き返せ……』
『引き返せ……』
『引き返せ……』
まるで共鳴しているかのように四方から聞こえてくる謎の声。その得体のしれない現象に、私は幽霊だという確証がないにも関わらず、恐怖で足がすくみあがった。
『引き返せ……』
『引き返せ……』
それでもなお連呼し続ける不気味な声は、私に冷静さを失わせるのに十分な威力を放っていた。
どうして引き返さなければならないの?
このまま引き返さなかったらどうなる?
答えのない疑問はやがて大きな不安となって私の心を押し潰そうとする。
「ね……、ねえ!? ? 誰なの!?? ? なんで引き返さなきゃならないの?!」
呼び掛けてみるが、何の返事もない。頼れる者もない今、信じるのは自分自身しかいないのに、謎の声によって私の心はもうすでに挫けそうになっていた。
「この先に行ったらいけないの?!? ? ねえ、教えてよ!!」
けれど私の声に謎の声が反応することはなく、静寂がそれを肯定していると言わざるを得なかった。
怖い。この先に進んだら、なにかとても恐ろしい目に遭う気がする。
「……ううん、それじゃダメだ」
怖いからって逃げていちゃ、今までの私と変わらないじゃないか。
マイナスになっていた感情を必死で振り払うと、今度は耳を塞ぎながら走り出す。
惑わされてはいけない。そう、ここはいわば心を鍛えるための場所なのだ。
『引き返せ……』
『引き返せ……』
「……ああ、もう!! やめてよ!!」
再び言い続ける謎の声にしびれを切らした私は、声の主を必死で探した。そして、すぐ近くの壁に、不気味な顔をした白い仮面から声が発せられていることに気づいた。
『引き返せ……』
『引き返せ……』
その白い仮面は、声を放つと同時に目から怪しげな光を放つ。その様子はまさに仮面に乗り移った悪霊のように見えた。
怖い。けど、この仮面をどうにかしない限り、先には進めないような気がする。
辺りを見回し、何かヒントになるものはないかと再び周囲を見渡す。けれど、それらしきものは全く見つからない。
いっそのこと、壊しちゃおうか……?
でも、もし壊して何か良くないことが起きたら、それこそ一人で対処できる自信がない。
考えが煮詰まり、もはやどうしていいかわからない精神状態になっていた。相談する仲間もいない。行く先を示してくれる人もいない。自分一人で決めなければならないのはわかっているのに、すでに心身ともに疲れ切っていた私には、正常な判断ができるとは思えなかった。
その時だった。突然遠くから、風を切る音がこちらにやってくるのに気付き、私は振り向く暇もなく、横に飛び退く。
ゴオオオォォォォ!!
「きゃあああっっ!!??」
背
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