暁 〜小説投稿サイト〜
俺様勇者と武闘家日記
第2部
ランシール
地球のへそ
[4/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
えてはいないくらい不規則だった。まるで広場のように開けていると思ったら急に幅が狭くなったり、腹ばいにならないと進めなかったり、地面に無数の穴が開いてあったり。それは人が作ったピラミッドの罠とは違い、自然の恐ろしさをこれでもかというくらい突き付けられているような感覚だった。
 その間にも、無数の魔物が襲い掛かるから、心も体も休まる暇がない。さらに空腹により判断力も鈍くなった私の体は、すでに限界を迎えていた。
 辛い。体が重い。でも、動かなければ、やられてしまう。
 最初は素手で戦っていたが、次第に苦戦するようになり、思いきって師匠の武器を装備して戦うことにした。一撃の攻撃力は高いのですぐ仕留められるのは利点だが、その分スピードは劣ってしまう。さらに武器の重さに慣れない私には肉体的疲労が改善されるどころか余計に悪化していき、結局またすぐに素手で戦うことになった。
 一人で戦うとなると、魔物の動き、戦況、自分の体調、それらすべてを常に把握し予測しなくてはならない。仲間がいることのありがたさが、今になって身に染みる。
『地球のへそ』という修行場がある以上、自分を限界まで鍛え上げることはまちがっていない。でも、限界まで鍛え上げても、一人で魔王を倒せるとは限らない。ユウリのお父さんも、単身魔王の城へ乗り込み、消息が分からなくなった。そして魔王は今も健在だ。その事実こそが、すべてを物語っている。
「……ふう」
 仲間の大切さを再確認したところで、いくらか呼吸が落ち着いてきた。そう、今はそれよりも、この修行場をクリアすることが先決だ。
 いつの間にか首から下げたペンダントを握りしめていたことに気づき、慌ててパッと手を離すと、改めて進むべき道へと目を向けた。
 さらに歩を進めると、今まで無造作だった自然の洞くつが、急に人工的な造りへと変貌した。地面や壁はそのままだが、道幅や高さが均一になっている。
 突然の景色の変わりように若干面食らったが、ここで踏みとどまっても仕方がない。私は意を決して歩みを早めた。
 すると、どこか遠くの方で、地の底から呻くような声が聞こえてきた。近づくにつれ、その言葉ははっきりと耳に届く。
『引き返せ……』
『引き返せ……』
「ひっ!?」
 こんなところに私以外の人間なんているはずがない。ということは今の声は……。
「ゆ、幽霊!?」
そう自ら言葉にした瞬間、さっと顔が青ざめる。
『引き返せ……』
『引き返せ……』
 気のせいかもと思ったが、やはりはっきりと私に対して言っている。
 人間でない以上、この声の主の正体は人間の言葉を話す魔物か、あるいはここで亡くなった冒険者の幽霊か。
 けど、前者なら、わざわざ「引き返せ」だなんて言わないはずだ。
 とすれば、やっぱり冒険者の幽霊!?
 すると、別の方向からも同
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ