保護
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ヴィラ・ローザ見滝原。
聖杯によって見滝原に召喚された友奈と真司が格安で借りている物件だ。
そんな見慣れたボロアパートを見上げながら、真司が友奈に尋ねた。
「これ、誘拐じゃないよな……?」
彼は背負ったアカネを振り向きながら呟いた。
友奈は心配そうに、気を失ったままのアカネを見やる。
真っ青な顔のまま、アカネは動かない。道中何度か彼女の生存が不安になったが、彼女の背中が上下しているところを何度も確認していた。
「アンチ君も、休んで行って……あれ?」
その時、友奈は気付いた。
いつの間にか、アンチの姿が見えなくなっている。
「どこ行ったんだろ、アンチ君?」
キョロキョロと周囲を見渡すが、彼の姿はどこにもない。烏が鳴く時間帯、子供だから家に帰ったのかななどという考えさえ過ぎってしまう。
「へ? あれ、確かに」
真司も、友奈の言葉によって、アンチがいなくなっていることに気付いたようだ。彼は一度アカネを背負い直し、友奈と同じくアンチを探す。
だが、紫のローブを纏った少年の姿はどこにもない。
「うーん……でも、お姉ちゃんは今こっちにいるのに……そもそも、アカネちゃんを本当はどこに送ればいいのかも分からないのに……結局、警察に通報……ってわけにはいかないんだよね」
友奈はスマホを見下ろしながら言った。
いつでもアカネのことを警察に連絡してもいいが、トレギアが絡んでいる以上、下手にアカネを関わらせてしまえば、より多くの人に危険が及ぶ可能性がある。何より。
「うん……わたしたちのこと、えっと……餃子キカンに聞かれちゃいけないんでしょ?」
「ぎ、餃子? 友奈ちゃん、そんなに餃子食べたかったのか?」
「ち、違うよ! ほら、警察とか、消防とか……」
「ああ! 教会キカン……あれ?」
「行政機関ですか?」
その言葉は、友奈の背後からだった。
いつの間にやってきたのだろうか。
友奈を完全に覆いつくせるほどの紫の巨体。友奈の肩幅を大きく上回る紫の帽子の下の肌色で、友奈はようやくそれが婦人だと気付く。
「こ、こんにちは。美輝さん」
「ええ。こんにちは友奈さん」
志波美輝。
このアパートの管理人であり、その外見や素性に至るまで全てが謎の女性である。
その目に妖しい光を灯しながら、彼女は真司が背負う少女を見つめた。
「ああ、えっと……その……」
どこから聞かれていたのだろうか。
友奈は目を点にしながら、あたふたと腕を振る。
だが、そんな友奈の姿を見ながら、美輝はほほ笑んだ。
「何も心配することはありませんよ」
彼女は「おほほ」と笑い声を上げた。
「行政に頼めない人なんて、この寮では珍し
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ