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冥王来訪
第二部 1978年
狙われた天才科学者
百鬼夜行 その2
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ターの襲撃事件から考えて、10年以上も人類を苦しめぬいたBETA。
幾多の血を吸って増長した化け物を、両手から繰り出す必殺の一撃を持って、(ことごと)く粉砕。
また彼を恐れて、暗殺を企み、あまつさえ核攻撃も躊躇(ためら)わなかったソ連政権を相手に、縦横無尽に暴れ回った。
300万の精兵を抱えるソ連でさえ負けたのだ。35万の兵力しかない西ドイツが、まともに戦っても勝てる(すべ)はない。
 地を埋め尽くし、濛々と土煙を上げて、怒涛の如く突撃してくるBETAと相対し、八方から射浴びせられるレーザーの中を駆け巡り、群がる敵をバタバタと、苦も無く打ち倒した。
あの50メートルもある、白塗りの大型機。天のゼオライマーに狙われれば、最後。
ソ連赤軍の精鋭ヴォールク連隊の、百機以上の戦術機も灰燼に帰してしまうほどの砲撃を連射しながら、猪突してくるであろう事は明白。
それを避けるために、必死の思いでよこしまな企みをしていた調査員を、組織諸共抹殺した。
 BETAの襲撃でもそうだったが、誰在っても、すき好んで生命を捨てに出る者はない。
ましてや、天下無双と鳴り響いたゼオライマーを相手にまわしたとなれば、この35万の精兵とは言え、惨敗を喫するであろう。

 一人、執務室に居る首相は、椅子から立ち上がって窓辺に立つと、口を開く。
「我が国が生き延びるためには、多少の犠牲も必要なのだ。憲法擁護局長よ……赦してくれ」
ドイツ国家存続のために、(とが)無き人々を殺したことに慙愧(ざんき)の言葉を吐いた男。
彼の心中は、混乱をきわめ、ただ憂懼(ゆうく)が渦まくばかりであった。


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