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冥王来訪
第二部 1978年
狙われた天才科学者
百鬼夜行 その2
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に工作の手を広め、聖者や賢人の墓を掘り暴き、遺体を辱めた後、珍宝珠玉や朱泥(しゅでい)金銀など得難い歴史の財宝を(かす)めた。
 そして彼等は、BETA戦争の混乱を利用し、先年フランスが頼みとする旧植民地のアルジェリアで兵乱を起こした。
フランス外人部隊と国家憲兵による大規模な取り締まりを受けるも、賊徒を裏から煽動・援助し、地下に潜り、延々と各国の軍事施設や政府機構に対して破壊活動を続けていた。

「あのアジア人の男もBETAが無い世界では不要……BETA教団共々死んでもらうのよ」
老人はそう告げると、くつくつと不気味な笑い声を上げた。
 
 老人は、60年前の1917年にロシア革命で、赤匪の頭目レーニンを帝政ドイツが支援した(ひそみ)(なら)って、BETA教団への大規模な援助の策を企む。
 


 憲法擁護局での密議は、その日の内に、ドイツ連邦情報局(BND)局長の耳に伝わる。
木原マサキ暗殺計画案の報を受けたBND局長は仰天して、首相に仔細を告げた。
色を失った首相は、机の上に有る気付け薬を口に含むと、マグカップを取って水と共に呷る。
「木原は、まだハンブルグに居るのだな」
首相の問いかけに、青白い顔色をして、局長は応じる。
「郊外にある米軍第二師団の基地にあって、機体の整備をしてると聞き及んでおります」
「物騒だ。もし、この事実が明るみになって木原の耳に入って見ろ。我等は血祭りにあげられるぞ」
「私も、同様に案じて居ります」
「由々しき事態だ。この際、彼等には消えて貰おう」
情報局長は、室内にある秘密回線で連邦国境警備隊(BGS)に連絡を入れた。

 即座に、国境警備隊指揮下の第9国境警備群に出動命令が下った。
第9国境警備群は、1972年のミュンヘン五輪の際に起きた、「黒い九月」によるイスラエル選手団惨殺のテロ事件を受け、結成された特殊部隊である。
 隊員は警察官の身分ではあるが、英国SASやイスラエルの総司令部偵察局の指導の元、訓練を受けた部隊で、最新鋭のMP5短機関銃を装備した精鋭。
 市内にある憲法擁護局の庁舎にヘリで乗り付け、表裏から急襲する。
黒装束に防弾チョッキを着て、ヘルメットを被る隊員は、建屋に入ると、内部を爆破しながら、逃げ出して来る職員や調査員を男女問わず射殺した。
 無論、件の老人も逃がさなかった。
待ち構えた隊員に、短機関銃で雨霰のごとき弾を浴びせられ、冥府へ旅立った。


 首相は、後先を考えずに憲法擁護局の破壊を命じたが、それには彼なりの考えがあった。
もしこの西ドイツが、木原マサキと言う無敵の男に目を付けられたら……
男は、木原マサキと言う人物を、天のゼオライマーの存在を考え直した。そして心に(おそ)れた。
 月面基地にあったサクロボスコクレー
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