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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?
ほんへ
始まりの章-世界は終わった、しかし物語はここから始まる-
奇妙なS/悪徳政治家を追え
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数ヶ月前…

「だいぶ歩いたな…。」

リュックを背負い、額の汗を拭って丘から眼前に広がる景色を眺める青年が一人、
彼こそ、鈴鹿御前の本来のマスター、田村 征(たむら せい)だ。

「おーい、鈴鹿!将!」
「はいはい、ったくちょっとくらいは私達に合わせて欲しいし。ね?将。」
「ううん、だいじょぶ。」

後から着いてきたのは鈴鹿御前と弟の田村 将。
世界が崩壊し、肉親は弟のみとなった兄。
この子だけは絶対に守りぬくと誓ったその日の夜、彼の元へ現れたのがこの鈴鹿御前だ。
今では2人の大切な弟なのだ。

「将、見てみろ。絶景だぞ。」

駆け寄る将にそう言い、兄は弟を抱え上げてその景色を自分の目線から見させる。

生い茂る木々。まるで都会とジャングルが合わさったような異様な光景。
もう、ここは自分達が住んでいた日本ではないということがいやでも分かったが、兄の言う通りそれは息を飲むほどの良い景色だったのだ。

「すごい…。」
「疲れなんて吹き飛んじゃうだろ。」
「征と同じだと思わないでよ。将はまだ子供なんだし、趣味で山登りなんかしてないんだから!」

と、我先にどんどん進んでいったマスターを叱る鈴鹿御前。
本人は笑ったまま「悪い悪い」と言って後頭部をかいていた。

「もう!絶対悪いって思ってないし!」
「思ってる思ってる!今度はみんなにあわせてゆっくり行くよ。」
「そういう問題じゃないし!!わざわざ高いところ選んで登るのをやめろって言ってるの!!」

と、怒ってはいるものの鈴鹿御前はニコニコしている。
兄が笑い、それに釣られて鈴鹿御前も笑う。
将はこの光景がたまらなく好きだった。
父さん母さん、そして祖父母もいなくなり、唯一の肉親は兄のみ。
沢山泣いて、現実を受け入れて、兄と一緒に生きると決意した。
そんな兄が、こうして笑っているのが幸せだった。
よく分からないけど突然現れたお姉ちゃんも悪い人じゃないらしく、すぐに仲良くなれた。

兄がいて、鈴鹿御前がいて、自分がいる。
それだけで良かった。
豪華な暮らしやおもちゃなんていらない、
それ以上の幸福は求めなかった。
しかし、
幸せというのは長く続かないものなのだ。



「私も東京をめざしているんだ。良かったら一緒に行かないか?」

ある日のこと、征達は1人の中年男性と出会った。
高そうなスーツを着ているが所々ボロボロで、これまでたくさんの災難にあってきたのだろうというのが伺える。
男はこちらに気付くなり、そう説明した。

「分かりました。目的は同じですし一緒に行きましょう。」
「……。」
「ほら、将、隠れてないでちゃんと挨拶しないと。」

気難しそうな顔をしていて、
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