第七十一話 詰所の中その五
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「ちょっと」
「ああ、駄目なんだ」
「何かこういざって時には」
どうもと言うのです。
「動けなくて」
「そうだよね、君は君で」
「若し先輩が言っても」
それでもというのです。
「動けないかと」
「これは二人共あまり進展ないね」
次郎さんは笑って言われました。
「よっぽどのことがないと」
「進展?」
私は思わず首を傾げさせてしまいました。
「何についての進展ですか?」
「そのうちわかればいいよ。それで案内だけれど」
「はい、詰所の中のですね」
「三階はわかってるね」
「女の人のところですから」
私も住んでいるところです、お部屋を一つ貸して頂いています。
「だからですね」
「そう、入り口だけね」
「そうさせてもらいます」
「ああ、先輩今三階におられますね」
新一君もお話を聞いて言いました。
「あそこに今は」
「そう、お部屋があるの」
私も答えました。
「あちらにね」
「そうですよね」
「悪いけれど三階はね」
「女の人のお部屋ですから」
新一君もわかっていました、そんな返事でした。
「絶対に入らないです」
「あれっ、入らないの」
「はい、そうします」
「紳士ね」
これには少し驚きました。
「真一君って」
「いや、女の人の場所には入らないことは」
このことはというのです。
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