第122話『晴風』
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魔導祭襲撃の翌日。大事を取って選手たちはホテルで待機していたが、ようやくそれが解除されたのだった。
よって、晴登たち魔術部一行はようやく帰るところだ。
「……ト」
晴登は昨日、影丸と歓談したことを思い出す。初対面はあまり良い印象はなかったが、いざ話してみると同年代の友達と話しているかのような気楽さがあった。父さんの知らない一面を知れて、とても満足している。
「……ハルト、どうしたの?」
「うわ!?」
その満足感に浸っていた晴登は、背中に背負った人物の一言で現実に引き戻される。見ると、心配そうな表情で結月がこちらを覗き込んでいた。
「さっきからボーッとしてるし、何かあったの?」
「いや、ちょっと考え事してただけ」
「ふぅん。あんまり寝れてないんじゃない? 目ばっか擦ってるけど」
「あ〜……ちょっと目が疲れてるだけかな」
「ならいいけど……」
自然にやっていたつもりだったが、結月にはお見通しだったらしい。
実は、寝不足という訳ではなくて、今朝からやけに視界がぼやけており、さっきから瞬きが多くなったり目を擦ったりしていたのだ。昨日色々なことがあったから、きっと疲れているんだと思う。眼精疲労ってやつだろうか。
「結月こそ、病み上がりだけど大丈夫?」
「もちろん!……と言いたいところだけど、まだちょっとダルいかな……」
そう言って、結月は引きつった笑顔を見せた。
一昨日の昨日で熱を出せば、体調は"ちょっとダルい"どころではない。本来であれば今日も安静にしていないといけないのだが、生憎今から家に帰らなければいけないので、体調が万全ではない彼女を晴登が背負って移動しているという訳だ。
ちなみに帰りが1日遅れる旨は、昨日のうちに電話で智乃に伝えてある。そこで父さんと話すことも期待したが、家に帰れば同じことだ。むしろ、電話越しじゃなくて直接話をしたい。
「おーい!」
「ん? あれは……」
「マーさん! 無事だったんですね!」
ホテルから出てすぐに声をかけてきたのは、開会式の前以来の遭遇となる商人のマーさんだった。彼もまた待機命令の対象となったのだろう。でなければ昨日のうちに撤退しているはずだ。
「何とかな。そこの白髪の嬢ちゃんが観客席まで守ってくれたおかげだ。ありがとな」
「えへへ……どういたしまして」
襲撃の折、敵はフィールドに現れたが、雨男の攻撃は観客席にまで至っていた。それすらも防いだ結月はまさにヒーローと言えるだろう。パートナーとして誇らしい気持ちだ。
「それにしても、お前らすげぇじゃねぇか!ベスト4だぜ! こんな快挙見たことねぇよ!」
「だから言ったろ。今年のメンツは
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