死ねない呪いの勇者
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り、二人一緒に急降下してゆくがジュイネがグレイグの手をとると落下速度が緩まり、イシの大滝に無事降り立つ。
「??魔王と共にお前も存在ごと消えるなど、杞憂だったではないか。今俺の目の前に居るお前は、人間に戻ったジュイネだ。そうだろう?」
「ふふ??そうだね。───ほんの一時、人間に戻れてよかったよ」
両の手を絡め合い見つめ合っていた二人だが、不意にジュイネの存在が微かな光の粒と共に薄まってゆくのを目にしたグレイグは、ジュイネの身体に触れようとするもすり抜けてしまう。
「なッ??何故だ、どうなっている?!」
「これで、いいんだよ。僕の存在は??このままこの世界から消えるんだ、完全に」
ジュイネは儚げに、それでいて清々しい表情をしている。
「待て??お前は消える必要はないはずだろうッ」
「グレイグはそう思ってくれても、神様って存在からしたら僕はもう用済みみたいだ」
そう述べる間にも、ジュイネを形作る輪郭がどんどん失われてゆく。
「失敗した勇者は、無かったことになればいいんだ。誰の記憶からも消え失せて、忘れ去られる」
「俺は??俺は忘れんぞ、決して??! 勇者ジュイネは??いや、ジュイネという一人の人間が確実にこの世界に存在していたという事を」
「???ありがとう、グレイグ。そう言ってもらえるだけで救われるよ。グレイグだけでも、僕という存在を覚えていてくれるなら────」
ジュイネはグレイグに儚げな笑顔を向けたまま、その場から微かな光の粒と共に消え失せた。
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勇者のかつての仲間達は、亡くなった一人を除いて誰一人として彼を覚えてはいなかった。
交流のあった者はもちろん、育った故郷のイシの村の住人や幼なじみ、育ての母親すらも。
グレイグだけは“彼”を覚えていて、復興させたイシの村で彼を想いながら暮らしていた。
??ある日の事、自然と足が向いたイシの大滝でグレイグは小さな籠が浅瀬に流れて来たのに気づき拾い上げてみるとその中には、赤ん坊がすやすやと眠っていた。
グレイグはその時察する。この子は??ジュイネの生まれ変わりである事を。勇者の紋章など携えていない、ただ一人の人間として再び生を受けたのだと。そこに神や命の大樹の意思など関係ない。
その子は無論ジュイネと名付け、グレイグはその親代わりとしてイシの村で育ててゆく事にした。
───健やかに育った“彼”は、やはりジュイネに瓜二つだった。
小さい頃から自由に世界を見せて歩き、16の成人を迎えたら改めて共に世界を旅する約束をしている。
世界が“彼”を忘れようと、
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