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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第75話 演習 その1
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列形成に手間取っておらん」

 それまで前を向いているというだけでバラバラであった各隊は、僚艦同士が連絡を取り、少しずつではあったが戦列が形成されて行っている。まだ同じ艦艇で構成される隊レベルではあったが、秩序は間違いなく回復傾向にある。仮想敵も最大戦速による追撃は陣形が乱れると考えているのか、第一戦速以上を出して追撃はしてこない。

「しかしこのまま鬼ごっこでは訓練にならん。どう戦うかの?」
「用兵術の基本では、後背に敵を負った場合、速やかに前進して小集団毎に分散し、砲火の集中を避けつつ各個反転。相互連携しつつ集合し、敵と正対する。となっております」
「仮想敵の指揮官は熟練した用兵家じゃ。そんな余裕など到底与えてはくれんじゃろう」

 もし教科書通りに行動すれば、仮想敵は陣形が乱れても最大加速し、小集団毎に各個撃破してくる。何しろ追撃されている中で反転迎撃するということは、足を止めることとほぼ同義だ。アスターテのムーア中将やエルラッハ少将の例を挙げるまでもなく、容易く撃破されるだろう。

 かと言って金髪の孺子のように全速前進して敵の後背に出るというのもほぼ不可能だ。消耗戦うんぬんより、肝心の兵力がそれについていけるだけの能力がない上に、仮想敵の攻撃方向を一つに絞ってしまう欠点がある。それこそムーア中将のいう通り、仮想敵の後背に辿り着く前に味方の後衛が壊滅してしまう。味方の後衛とはすなわち集団主力である戦艦や宇宙母艦だ。共食いの蛇になった時の火力不足を招きかねない。

 勝機があるとすれば、相互の指揮官の能力はともかく、指揮下戦力の練度に差があるということだ。例えば部隊毎の動きについて……

「何か面白い手が思いついたようじゃな、ジュニア」
 どうやら顔に出ていたらしい。爺様とモンシャルマン参謀長は皮肉っぽく、ファイフェルは気味悪そうに俺を見ている。一歩間違えれば全滅も間違いない話だが、今回の相手は金髪の孺子でも疾風ウォルフでもない。
「本来机上の空論ですが、実例がなかったわけではありません。閣下に恥をかかせることになるかもしれませんが、これまでの忠勤に免じてお許しいただければ、と」
「儂は貴官の主君ではなく上官じゃ。そして上官とは……」
 爺様はしたり顔で、きれいに髭の剃られた顎を撫でつつ言った。

「採用した部下の提案についての責任を負う立場の者のことを言うんじゃ」





 それから二〇分。爺様と参謀長がひたすら付かず離れずで稼いだ時間を使って、俺は作戦行動指針をひたすら端末に打ち込んでいく。部隊毎の戦闘指揮は部隊指揮官であるプロウライト准将とバンフィ准将にある程度任せるしかないが、少なくとも編成されてより実戦二回。大過なく戦えている以上、そこは信じるしかない。取りあえず俺が入力すべきは各部隊の
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