第75話 演習 その1
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間に、続々と司令部の要員が階段を自分の足で登って、司令艦橋へと流れ込んでくる。
最初に入ってきたのはモンティージャ中佐で、ジャケットを左腕に巻き付け野生動物のような俊敏さで司令艦橋に飛び込んでくると、俺とメールロー中佐達を見て小さく悪態をつき自分の席の端末を起動する。それで俺が索敵関係のコンピューターを起動させていることを理解したモンティージャ中佐は、何も言わずに俺に向けて小さくサムズアップした。
次に入ってきたモンシャルマン参謀長は、やはりメールロー中佐達を無言で一瞥すると、俺を手招きし状況の説明を求めた。戦闘警戒警報の発令から、次席参謀の権限で戦闘準備を機動集団全艦下命したことを確認すると、俺の肩を二度叩いて、準備を進めるよう改めて命じた。
三番目には爺様とファイフェルが同時だった。というより副官であるファイフェルが、司令部個室で休んでいた爺様を連れて来たということだろうが、爺様の服装はキッチリしているのに、ファイフェルのジャケットはボタンがズレていて中の青いシャツがその隙間から飛び出している。爺様がメールロー中佐達には目もくれずモンシャルマン参謀長のところに歩み寄る間に、俺はファイフェルに向かってジャケットを指差すしぐさをすると、奴もすぐに気が付いて手早く服装を整えにかかる。
最後に来たのはカステル中佐とブライトウェル嬢で、カステル中佐は親の仇を見るような視線でメールロー中佐を睨みつけた後、自席に腰を下ろした。ブライトウェル嬢はここまでくる間にカステル中佐から話を聞いていたのか、何も言わず従卒席に座ることなく直立不動の姿勢を保っている。
司令部の幹部が全て到着したのを確認したメールロー中佐が三〇八秒と呟いた後、爺様のところまで行って、非礼をわびた上で査閲官権限による強制配置訓練を開始した旨を通告した。爺様はそれに対して特に恨めかしいことを言うことなくそれを了解したが、事態はその一五秒後にオペレーター達からの報告で急変する。
「後衛駆逐艦ボストーク七七号より入電。部隊主軸〇七四五時の方向、距離六・七光秒より不明艦船群急速接近」
「当該艦船群より、敵味方識別信号の応答ありません」
「数、およそ二五〇〇。フォーメーションBを形成。速力大。この速度で行きますと標準艦砲の有効射程まで約五分!」
「当該艦船群より『挑戦信号』を受信!」
同盟の、それも前線より遠く離れ厳重に管理されている訓練宙域に、二五〇〇隻にも及ぶ戦闘艦艇が同規模の部隊に対して『挑戦信号』を発するということは、内乱でもない限り可能性は一つしかない。俺を含めた司令部要員の視線がメールロー中佐に集中すると、中佐はにこやかに頷いた。
「標準九月二三日一六〇〇時。統合作戦本部査閲部長クラーコフ中将承認第〇九三三五号、対艦隊戦闘訓練の実施を宣
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