溯る先に失い得るもの
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「──??ベロニカお姉様を蘇らせる為には、世界ごと過去へ時間を巻き戻す必要がある??そしてそれが出来るのは、勇者であるジュイネ様だけ??現在の記憶を持って過去へ戻る事が出来るのも、ジュイネ様ただお一人だなんて」
「そこまでして??あのベロニカが喜ぶと思うか? あの時のベロニカの想いを、失くしちまうのかよ。オレ達を命懸けで守ってくれた、あいつの想いを───」
「確かにあの時、我々は多くのものを失った。??だからこそこの世界を復興せねばならん。ベロニカを蘇らせる方法が、既に起こってしまった出来事を無かった事にするというのは、話が違い過ぎるわい」
「俺達も現在の記憶を持って過去へ戻れるなら、まだ話は判らなくもない??しかし、勇者であるジュイネしか現在から過去へ戻れないなど??それでは、ジュイネだけが罪の意識を背負い続ける事になってしまうではないか」
「そうよね??みんなで楽しい事も辛い事も経験してきたから今があるのに、過去へ巻き戻ったらそれを誰ともジュイネちゃんは共有出来なくなるわけでしょ? それって、辛すぎるわよ??」
「私達も、今の私達を失くす事になる??それって、とても怖い事だわ。大切な仲間や多くの命を失った経験があるからこそ、それをみんなで背負って明るい未来へ向けて歩み出したのに??」
セーニャ、カミュ、ロウ、グレイグ、シルビア、マルティナはとこしえの神殿にてそれぞれの思いを口にした。
「なぁジュイネ、お前はどうなんだ。お前なら??どうする」
「───??行けないよ。過去へは行きたく、ない」
カミュの問いに、ジュイネは俯く。
「ごめん、セーニャ??。僕も、ベロニカの想いは無駄にしたくないんだ。確かに、魔王誕生前に戻って、ベロニカや多くの人の命を失わずに済むかもしれない。けど、失っても得られたかけがえのない絆もあって、それを??無かった事になんて、したくない」
「????」
「それに??そんなことしたら、僕の勇者としての罪を無かったことにしてしまったら、それこそ僕らのしてきたことを、諦めることになる。そんなの、ベロニカに顔向け出来ないよ」
「じゃろうなぁ??。わしらとて、お主だけに全てを託して過去へ遡らせるなど、しとうない。これ以上、愛する孫に辛い思いをさせとうないんじゃ」
「私達は、皆でこれまでの経験を良くも悪くも背負ってこの先も生きていかなければならないの。??ジュイネだけに、これ以上重荷を背負わせる気は無いわ。貴方がもし行くと言っても、私達は全力で阻止するから」
ロウとマルティナはそう述べ、シルビアはセーニャを気遣う。
「セーニャちゃんの気持ちは、どうなのかしら???」
「私、は??私は、───ジュイネ様だけに辛い思いをさせてまで、お姉様
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