分かち合う痛み
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ベロニカお姉様もきっと、同じ想いだったでしょう。本当なら生きて、ジュイネ様を守り続けたかったはずです。けれどあの場は??大樹崩落時は、ああする他なかった。自分の事よりも私達をあの場から脱出させる事を優先し、力尽きてしまった。───もしあの時、気を失わずに私にも意識があったならと??何度思ったか」
「僕だって、そうだよ。けどベロニカだったら??やっぱりあの場は自分の力だけで、僕達を脱出させたと思う。自分の身も顧みずに??。ベロニカにはよくボーっとしてるとか、ビシっと決めてくれないとか言われて??守られる努力をしなさいとも、言われたな。その結果が、ベロニカを失うことになるなんて??勇者が聞いて呆れるよね。ベロニカには最初から最後まで守られてばっかりで??僕が守ってあげられたことなんてほとんどなかった。今だって変わらず仲間のみんなに守られて??自分が、情けないよ」
そう述べるジュイネの声が、微かに震えているのにセーニャは気付く。
「私も、とても賢く精神的にも強いお姉様と違って??出来損ないのグズな妹ですわ。お姉様と双賢の姉妹だなんて、胸を張って言えないほどに。??それでもベロニカお姉様は、言葉は多少辛辣でも一度だって私を見離すような事はしませんでした。ありのままの私を??受け入れて下さっていたのだと思います」
「──────」
「守られてばかりで情けなくても、出来損ないのグズだとしても、諦めるわけにはいきません。失った痛みを抱え分かち合いながら、私達は生きて行くのです。魔王誕生で犠牲となった多くの人々に、償う為にも」
「???セーニャこそ、勇者だよ。『勇者とは、決して諦めない者のこと』だって、海底王国の女王セレン様も言っていたから。仲間のみんなだってそうだ。諦めない人は、きっとみんな勇者だ。───命の大樹から紋章を授かった僕だけが、勇者なわけじゃない。ベロニカだって、死の淵にあっても諦めずに僕らに希望を託したんだ。誕生させてしまった魔王は、必ず討つよ。勇者として、というよりも??何より、僕自身のケジメとして」
end
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