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冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
崩れ落ちる赤色宮殿  その3
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残念なことにその企てを知る首相を君達は殺してしまったのだよ……」




「嘘を抜かせ。はなから俺の事を狙っていたではないか。違うか……」
マサキは、ソ連人の間を掻き分けると、KGB長官に相対した。
「遺言があるのなら、俺が聞き届けてやるよ」
彼は、インサイドホルスターに回転拳銃を仕舞うと男の方を向いた。

 長官服を着た老チェキストは、右に立掛けたサーベルを取ると、鯉口を切る。
老人は、流暢なドイツ語でマサキの問いに応じた。
「この場所に君が来た時点から、君の負けは決まっていたのだよ……。木原マサキ君」
抜き身のサーベルを、マサキの方に向ける。
 サーベルを振りかぶり、マサキの顔に近づける。
頬を白刃でひたひたと叩く。マサキは身動ぎすらしなかった……。

「木原よ……聞こう。貴様の望みとは何だ」
マサキは鋭い眼光で、目の前の老人を睨みつけた。
「俺の方こそ聞きたいね……何故俺を付け狙う」
薄く色の付いた眼鏡のレンズが夏の日差しを受け、怪しく光る。
「私個人の感情としては我が甥ゴーラ(グレゴリーの略称)の(かたき)を取らせてもらうためとだけ言っておこう」
黒く太い秀眉を動かす。
「ゴーラだと……聞いた事がないな。そんな雑兵」
老人は、左手で色眼鏡を取ると懐に仕舞った。
「せめてもの慈悲だ、教えてやろう。ゴーラはKGBの優れたスパイとして東ドイツに潜入。
シュタージの少将にまでなった。その名をエーリッヒ・シュミットと変えてな!」

「故に貴様の動きは逐一この私の耳に入ったのだよ……。
今頃は駐留ドイツ・ソ連軍の中にいるKGB部隊が暴れ回る手筈。
シュトラハヴィッツ少将と忌々しいベルンハルト中尉、議長諸共殺している事であろう」
マサキは、一頻り哄笑する。
「何がおかしい」
じりじりと歩み寄ると、腰のベルトから何かを差し出す。
「今の話……、すべてばっちり記録させてもらった」
そう言って、右手に握った携帯レコーダーを見せる。
「貴様……」

 吊り紐で背負ったM16自動小銃を取ろうとした矢先、六連式のナガン回転拳銃が火を噴く。
「お互い銃は抜きだ……、お前も日本野郎(ヤポーシキ)であろう、侍の末裔だろう。
剣技で決めようではないか」
 そう言って拳銃を捨てると、サーベルを振りかぶる。
マサキは思わず後ろに引き、間一髪のところで一撃を避ける。
「死ねぃ!」
背を向けて、その場より退いた。

 銃を抜こうとする兵士達に向けて、長官は言い放った。
「諸君。手出しは無用だ、私の好きなようにさせてくれ。
ソ連を守る盾であるKGB長官の私が、今こそ、このたわけ者に思い知らせてやるのだ」
剣を構えたKGB長官は、さながら憤怒した豹を思わせた。

 マサキは失笑を漏らした後、M
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