第二部 1978年
ソ連の長い手
崩れ落ちる赤色宮殿 その3
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「了解しました。同志大佐!」
何処から聞きなれぬ自動小銃の音がすると空挺部隊の兵士達は姿勢を低くして、小銃を構える。
槓桿を引き、弾倉から薬室に銃弾を送り込むと射撃姿勢を取る。
大佐は、KGB長官をねめつける。
「こいつらは捨ておけぃ!どうせ死ぬ運命だ」
そう言い残すと足早にジェットに乗り込んだ。
空挺兵士の乗ったイリューシン62は、轟音と共に離陸準備を始めた。
ソ連首脳陣は、空港の端の方に逃げるべく滑走路を横断し、ターミナルビルの方へ駆けこむ。
ふとKGB長官は立ち止まると、遠くより駆け寄って来る兵士達に敬礼をした。
カーキ色の開襟野戦服に編上靴。『パナマ』と呼ばれる鍔の広い防暑帽を被った一群。
彼等は、KGB虎の子の部隊である、アルファ部隊の兵士達であった。
遅れて来た兵士達に指示を出す。
「裏切者どもを撃ち殺せ!」
無線機を持った兵士が、空港に待機しているストレラ-10に連絡を入れる。
即座に赤外線誘導ミサイルが発射されると、ロケット弾は直進し、航空機に衝突。
爆音が響き渡ると同時に閃光が広がった。
眩い閃光と共に白磁色の機体が滑走路に出現した。
天のゼオライマーは、ハバロフスク市内より空港に転移してきたのだ。
ゼオライマーより飛び降りて来る、帝国陸軍の深緑色の野戦服を着た男。
着地すると、姿勢を正すより早く拳銃を取り出す。
右手に構えた長銃身の回転拳銃をソ連邦最高会議議長に向けた。
ピストルは火を噴くと、議長の眉間を一撃で貫いた。
巨大ロボの出現に唖然とする彼等の目の前で、ソ連邦議長は暗殺された。
回転拳銃を片手に、ソ連首脳に近づいて来る。
「何者だ。貴様は……」
男は、不敵な笑みを浮かべつつ、ドイツ語で答えた。
「俺は木原マサキ……天のゼオライマーのパイロットさ」
KGB長官は怒りのあまり、身体を震撼させる。
右の食指でマサキを指差し、こう吐き捨てた。
「こやつを殺せ!」
周囲を警護する側衛官達が自動拳銃を一斉に取り出す。
雷鳴の様な音が周囲に響き渡ると同時に、 濛々と立ち上がる白煙……
轟音の後、横たわる首相の遺体を前に側衛官の一人が呟いた。
「あなた方の指示が原因で、ソ連はゼオライマーに荒された……。
それが今はっきり判りました。その責任を首相に取ってもらったまでです」
唖然とするマサキを余所に、ソ連人たちは内訌を始めた。
「勿論、貴方にも責任を取ってもらいますよ……長官」
政治局員の一人が、重い口を開いた。
「だが、その前に聞きたい。木原マサキの抹殺命令は、国益の為か……」
KGB長官は一頻り哄笑した後、彼等の方を振り向く。
「そうだ。ソ連国家100年の計の為、私は木原の抹殺を指示した。
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