闇と太陽と月の影◆◇二つの紋章
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いる。
「ジュイネ??! やっと意識を戻してくれたかッ。俺は??俺はこのまま、お前が───」
思わず涙が溢れ、言葉が続かない俺へジュイネは、微かに笑って見せてくれた。??だが、どす黒い闇の呪いは容赦なく端正な顔立ちまで覆い尽くさんと迫っていた。
「グレ、イグ??おねが、い」
「お願い??? 何だ、何でも言ってくれジュイネ」
動かしづらいであろう左手をジュイネが上げようとした為、俺はその手をそっと両手に包んだ。??勇者の紋章はこの時既に、半分ほど闇の呪いに染まっていた。
「紋章??受け取って、くれない?かな」
「???? 何を、言って」
「こんなの、でも??僕の、生きた証?だから」
呟くようにジュイネがそう言うと、手袋をしていない俺の右手の甲が薄らと光った。??すると何故だろうか、ジュイネの勇者の紋章だったはずのものが、俺の右手の甲に現れ出ている。
「これは、どういう事だ???」
「もう??僕には、必要ないんだ??。このまま、闇の呪いと共に完全に消えてしまう前に???グレイグに、受け取ってもらったんだよ」
闇の呪いと共に??完全に消えてしまう、だと───
「僕は??魔王を誕生させてしまった、失敗作の勇者だから??神様から、怒りを買ったのかも。沢山の人を??仲間の一人も、犠牲にしてしまったし??魔王を倒したくらいじゃ、許されなかったんだよ?きっと」
やめろジュイネ??そんな事を言うな。
「今まで、本当にありがとう??グレイグ。他のみんなにも、一杯感謝してるって、伝えて」
それは自分で伝えてくれ。俺は、俺は何一つお前に───
「ごめん、ね???さよ、な」
??目に涙を浮かべたまま最期の言葉を言い終わらない内にジュイネは、その存在自体が全て黒く染まり、音を立てずに崩れ去り、黒い塵と化して空気中に消えた。───あっという間、だった。
俺の右手の甲には、ジュイネが譲り渡してくれた勇者の紋章が微かに光を放っている。??彼は言っていた、「こんなものでも、自分の生きた証だから」と。
『───勇者の紋章を受け継ぎし者よ』
茫然自失に陥っている俺の頭の中で突如、声がした。??その声の主は、神の乗り物ケトスである事を俺は何故か理解した。
『取り戻したいものがあるのならば、その機会を与えましょう。忘れられた地にある、とこしえの神殿へ向かうのです。??この、“神秘の歯車”を使うと良いでしょう』
何処からともなく、“それ”はジュイネが横たわっていたベッドの上に現れた。
『勇者の紋章を受け継いだ貴方なら、天空のフルートで私を呼ぶ事も可能です。作成した勇者の剣も
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