時の渦に呑まれし者:前編
[1/11]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
(───時を遡る場所を、間違えた??? 僕、は??失敗した???)
雨の降りしきる瓦礫の散乱した石畳の上に、ジュイネは身体中傷だらけで横たわっていた。
(何で、こんな??身体中、痛むんだろう??起き上がれない??。まるで、鋭い刃物で身体中を裂かれたみたいだ??)
(随分、空が暗い気がする??夜、なのかな。ここは、どこなんだろう??。遠いような、近いような??雨音に混じって魔物の咆哮か、人の叫び声も聞こえる??。何かが、焦げてるような臭いと??血なまぐさい感じがする。何が、起きてるんだろう)
(誰かが魔物に襲われてるなら、助けたいけど??身体が、動かせない??視界が、霞む。声も、出せないから自分で回復呪文も唱えられない??)
(時の、番人は??時の渦に呑まれてしまったら、永遠に時の狭間を彷徨うことになるって、言っていたけど??まさかここが、そうなのかな??。僕は結局、過去の魔王誕生も??世界崩壊も阻止出来ずに、元居た世界からも切り離されて??このまま知らない場所に永遠と存在し続けなきゃ、ならないのか───)
「おい??おい、お前! 生きているのかッ?」
(え??? この声は、グレイグ??!? 時を遡ったのは、失敗じゃなかった???)
「随分傷だらけだが、まだ息はあるな??《ベホイミ》!」
(あ??、ほんの少しだけど、全身の痛みが和らいだ気がする??)
「む??、やはり補助程度にしか使えない俺の呪文では回復しきれないな。とにかく、ここから安全な場所に運ばねば」
(名前を呼んでくれないから、僕のこと??分からないの、かな。僕と知り合う前の、グレイグ??? 目が霞んで顔がよく見えない??)
「おいお前、しっかりしろ。まだ、死ぬなッ??! ユグノア王国は滅んでしまったが、生きてさえいれば??何度だって立ち直れる。希望を捨てるな??!」
(ユグノア王国が、滅んだ??? まさか、僕が遡った場所と時間軸って)
「??生き残りは、もうその少年だけか?」
「あぁ、ホメロス??。酷いものだ、老若男女問わずほぼ皆殺しだからな。俺とお前の到着が遅れてしまったのが悔やまれる??」
グレイグらしき人物に力強く抱き上げられて背負われる際、身体中に痛みが走って思わず声が漏れる。
「?っ??!」
「もう少し優しくしてやれ、お前はすぐ力が入り過ぎる」
「あぁ??すまん、痛かったか? ??もう少しの辛抱だ、持ち堪えてくれッ」
(グレイグの、大きな背中??安心、する。このまま、眠ってしまいそうだ??。今は、何も??考えたくない)
──────────
───────
────
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ