時の渦に呑まれし者:前編
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と言っていいほど殺気を感じなかったと。??俺を殺すつもりは毛頭なく、逆にお前が殺される気であったなら俺は反撃する必要すら無いという訳だ」
「──────」
「故郷を失い、自暴自棄になるのも判らなくもないが??性急過ぎやしないか。故郷を滅ぼされて尚生き残ったのなら、お前には生きる意味があるはずだエルジュ」
「違う??」
「????」
「僕はジュイネだ、エルジュじゃない」
「ジュイ、ネ??? ジュイネだとッ? その名は??ユグノア王国に勇者として生まれ、今や悪魔の子として行方不明となっている赤子の王子の名ではないのか。まさか??その名と偶々同じだとでも?」
「本人だよ??未来から、来た」
「何を、馬鹿な事を」
「あぁ、馬鹿だよ。遡るべき時を間違えて、失敗して??未来から完全に切り離されて戻る術すらない。勇者の紋章すら消えた??役立たずの勇者だ」
不敵な笑みすら浮かべるジュイネ。
「遡るべき時を間違えた、だと???」
「本当なら??今より16年後の過去に戻るべきだったんだけどね??何でか失敗しちゃってさ。意図せず二十歳くらいのグレイグに会いに来ちゃったよね」
「お前は、16年後の俺を知っていると???」
「知ってるよ。今と大して見た目は変わらないけど??勇者の盾にはなってくれたよね」
「勇者の、盾??」
「取り戻したいものがさ、いっぱいあったのに??それが出来なくなっちゃって。だから、若い頃のグレイグに殺されるのも悪くないかなってさ」
「??今この時代では、無理なのか? その、お前が取り戻したいものというのは」
「無理だよ??だって僕はもう勇者じゃない。左手の甲の紋章が消えたのは、この世界の今赤ん坊のもう一人の僕が本当の勇者なわけだから??未来から来た僕は用済みというか居る意味が無いんだ」
「赤ん坊が、大人になるのを待って真実を話せば───」
「その頃には僕自身消えてる。??分かるんだ、もうここに居られる時間が少ないって。根本的に同じ存在は同時に存在し続けることは出来ないんだ。───それとも、16年後にグレイグが“僕”に真実を伝えてくれるの?」
「それは??」
「デルカダール王に盲目に従ってるくせに、未来から来た悪魔の子を殺さなくていいのかな」
「お前は??どう見ても悪魔の子などには見えん。何か、デルカダール王は勘違いなされているのでは───」
「あはは、おめでたい頭だね。そんなだから空回りしてばかりで大切なことに気づくのが大幅に遅れるんだよ」
「なん、だとッ???」
「痛い痛い??手首に力入れ過ぎ。まぁ、別に
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