悲劇と悪夢と
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クーモスは満足気に暗闇の深淵から黄ばんだ牙を剥き出し獲物を見つめている。
『そうだ??抗えぬ絶望の闇に堕ちろ。それが我の糧となるのだ??』
(もう、いい??もうイヤだ??。もう誰も、勇者の僕のせいで犠牲になってほしくない。僕には、何も守れないんだ??何も、救えない。闇を払う勇者なんかじゃない??闇を引き寄せる悪魔の子、なんだから───)
?ジュイネ??ジュイネ、聴こえますか。どうか、この声が届きますように????
《オレは信じてるぜ、勇者の奇跡ってやつを》
《安心なさい、あんたはこのあたしが守ってあげるから》
《回復が必要な時は、いつでも仰って下さいね》
《アタシの夢は、世界中のみんなを笑顔にする事よん》
《我が愛しい孫よ、立派に育ってくれたのう》
《お前が世界を救う勇者なら、俺は勇者を守る盾となる》
(───??今、のは??みんなの、声???)
「今度は離さないって、言ったはずよジュイネ??。大丈夫、仲間達の声が聴こえているなら、私達は必ずこの悪夢から目覚める事が出来る」
間近に聴こえた凛とした声に顔を上げると、いつの間にかマルティナに強く抱き支えられていた。
「貴方が来てくれたお陰で、私の中の悪夢に区切りをつけられたの。魔族の姿をした幻影を蹴り潰した後、ジュイネの姿になった時は驚愕したけど??それはエレノア様の声でこう言ったわ。“やっと、声が届いた??あの子が残した、光の欠片のお陰。マルティナ??どうか今度は貴女が、悪夢に囚われたあの子を助けてあげて”って」
「??マルティナ」
『邪魔をするな女ァ! せっかくの新鮮な極上の絶望が不味くなるではないかァッ!』
醜悪な姿を晒して吠え立てるバクーモス。
「うるさいわよ、黄ばんだ牙のライオンさん。??さぁジュイネ、アーウィン様の絶望を私達の希望で光に変え、バクーモスをアーウィン様の中から引きずり出しましょう」
「うん??!」
マルティナとジュイネは固く手をとり合い、そこから伝わる互いの体温を感じて心が温かくなり、二人の身体から溢れる光が迸ってバクーモスはアーウィンの骸に留まっていられなくなる。
「───なんじゃ、アーウィンから眩い光が??な、なんとマルティナ、ジュイネ!! お主ら、急に姿が見えなくなったから心配しておったぞい!」
「大丈夫?! どこもケガしてないかしらっ?」
「姫様、ジュイネ??! 無事なようだな」
ロウ、シルビア、グレイグは寄り添うマルティナとジュイネの姿を確認出来て安堵するが、その直後引きずり出されるようにして絶望を喰らう魔物バクーモスが現れ出る。
「みんな、心配かけてごめん。??あいつが、アーウィン王とマ
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