悲劇と悪夢と
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そうだとも??我が名はバクーモス。人間の深き絶望を好み喰らうもの??。16年前の悪夢を、この地に縛られたユグノアの王の魂に見せ続け、飽きぬ程絶望を喰らい続けてきた??。だが流石に、別の味も試したくなってな??。そこへちょうど、女が一人やって来たものだから悪夢を見せ続けて絶望を味わっていた所だ??。しかし味が似通っていてな、どうやら16年前の当事者の一人らしかった。お前もその一人のようだが、お前の抱える絶望は一味も二味も異なるようだな???』
「何が、言いたい」
姿無きおぞましい声に怯むまいと気を奮い立たせて問うジュイネ。
『ゲハハ??! 判らぬか、ならば教えてやろう??お前が見て見ぬふりをしている、自分自身の心の悲痛な叫びを??!!』
「?!」
意識が急速に、内なる絶望に引きずられてゆく───
(あぁ??ダメだ、あの時の記憶が鮮明に、流れ込んでくる??見たくない、感じたくない??っ)
『世界を闇から救うはずの勇者が、闇を引き寄せ魔王を誕生させた挙句、命の大樹を崩落させ多くの命を奪い世界を壊した??』
(違、う??あれは、突然現れたウルノーガが僕の中の勇者の力と命の大樹の魂を奪って、勝手に魔王に───誰も、予測出来なかった。命の大樹自体さえ??)
『ほう??自分のせいではないと? 闇の衣を纏った者の尾行にすら気付かず、仲間を危険に晒し何一つ守れずに無様に敗北しておきながら自らの非は認めぬのか??。ならばお前は、命の大樹や他の仲間のせいにしていると? 大樹は事前に危険を知らせてくれず、勇者である自分を守ってくれるはずの仲間は敵の暗躍を察知出来ず、魔王誕生を招いたと??そう言いたいのか』
(違う、そういうわけじゃ───)
『何も違わぬ。お前は??勇者としての自らの罪から逃れたいのだ。勇者の生まれ変わりとされていながら、魔王を誕生させ多くの命を犠牲にするという罪を犯した無能な勇者??それこそ、“悪魔の子”と呼ばれるに相応しいではないか』
(?????)
『そもそもユグノア王国が滅んだのも??勇者の紋章を携えたお前が産まれた事により根深き闇を引き寄せ、大勢の者が死に??お前を守ろうとした父と母も凄惨な死を遂げたのだ』
(──────)
『城が多勢の魔物に襲われていた時、既に殺され事切れた者や怯えきった者達をその目で見ただろう??。更には命の大樹が崩落し異変に見舞われ壊れた世界で朽ちてゆく無数の命───全ては、勇者として生まれたお前のせいなのだ』
「ごめん、なさい??ごめんなさい??! 僕が勇者として生まれてこなければ、ユグノア王国が滅ぶことも、魔王が誕生して沢山の人が犠牲になることも、なかったのに───」
疼く胸の痛みに耐え切れず蹲り、啜り泣く様をバ
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