男装の勇者
第五話:奪われしチカラ
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後ろ姿ばかりしか見えない為、実際どこに口付けたかは知れない。グレイグはこの時、何故だか胸の奥がギュッと締め付けられた。
エマ
「───??やっぱり、私じゃダメみたい」
エマはそう言って立ち上がり、ジュイネから離れたが彼の姿は元には戻っていない。
グレイグ
「所詮は絵空事だ、真に受けても仕方ない」
エマ
「私はそうは思わない。私がダメだっただけで??今度は、グレイグ将軍様がやってみて」
グレイグ
「な、何故そうなるのだ」
エマ
「だって貴方は、ジュイネの心がこれ以上傷つかないために、私達イシの村人を生かしておいてくれたのでしょう。城の地下に匿ってくれている間も、ジュイネがどうしているかを度々教えてくれたり、ジュイネを心配するようなことを何度も口にしていたもの」
グレイグ
「????」
エマ
「世界が異変に見舞われた後も、最後の砦でこうして私達を守り続けてくれてる。??それは全て、ジュイネのためなんでしょう」
グレイグ
「俺は??俺に出来る事をしているだけだ(??だが俺はあの場で、ジュイネを守る事すら───。俺と王はあの後、デルカコスタ地方の海岸に流れ着いていた。そしてイシの村跡を拠点としデルカダール王国の生き残りの人々や城の地下に閉じ込められたイシの村人らを助け出し、いつしかこの場所は最後の砦と呼ばれるようになり、各地から避難民が集まった。??ジュイネやあの場の者達の無事を祈りつつ、最後の砦を死守すると誓ったのだ。そうしていれば、いずれまた再会出来ると───)」
エマ
「勇者として旅立ってからのジュイネを知っている貴方なら、元の姿に戻せるかもしれない。??自分の本当の姿を思い出させてあげて」
グレイグ
「(俺に、それが可能なのか??? 仲間になってやれず傍に居てやれなかった俺に。───いや、今の俺ならばジュイネの仲間になる事は出来る。ジュイネさえ、認めてくれれば)」
グレイグは再びジュイネの前に立ち、片膝をついて間近に寄り、顎に片手で触れ項垂れている顔を上向かせた。??本人は何一つ感じていない様子で、その虚ろな瞳はすぐ目の前の存在すら何も映していない。
グレイグ
「(自分の本当の姿を忘れた魚に、無償の愛をもって口付ける??。俺にそれが、許されるのだろうか)」
グレイグは以前、ジュイネの仲間のカミュと話す機会がありその時に言われた言葉を思い出す。
『───ジュイネに対して、特別な感情を抱いているようにしか思えねぇがな。例えば、籠愛的な』
??微かに開いたままの口元に口付けしそうになったが、グレイグは敢えてジュイネの額にそっと口付けた。
しかし、ジュイネの姿は変わらず人魚のままだった。
グレイグ
「(やはり、俺では
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