第2部
スー
唐突な別れ
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と本当のことを話した。
《そうか……。まだ生きていたんだな……。よかった》
その表情は、心の底から安堵した様子であった。
《私のせいで彼女まで冥府に堕ちたのではないかと、ずっと気がかりだったのだ。教えてくれてありがとう》
イグノーさんは、涙をにじませながら私たちにお礼を告げた。
これほどまでに彼女のことを心配しているということは、きっとイグノーさんもカリーナさんのことを大切に想っていたのだろう。
「話を戻すが、その『黒髪の青年』というのは、俺のことで間違いないんだな?」
《ああ……。おそらくこれが君たちとの最初で最後の会話だろう》
「どういうことだ?」
《私の未練は今この瞬間になくなった。故に私はもうじき天に召される。それと同時に、私の力によって留まざるを得なかった町の人たちの魂も、解放されるだろう》
すると、イグノーさんの体がさらに光り始めた。
《サイモンと同じ道を歩む者よ。その道は極めて長く、過酷だ。私たちと同じ過ちを繰り返さぬよう、永遠の世界から君たちを見守るとしよう。さあ、これを受け取ってくれ》
イグノーさんは懐から、緑色に輝く宝玉のようなものを取り出した。
《この『グリーンオーブ』は、魔王の城へと導く不死鳥ラーミアを復活させるための大事な宝玉。このオーブをあと五つ集めるのだ。ただし、このオーブを奪おうとする魔の者たちも動き出すだろう。君たちの未来に幸多からんことを願っている》
イグノーさんの手からユウリの手にグリーンオーブが渡った途端、目映い光が部屋の中を埋め尽くす。それは以前カザーブで、幽霊として現れた私の師匠が消えたときと同じような現象だった。
《もし、カリーナに会うことがあったら、伝えてくれ。『君を愛している』と。そして、『私の分まで生きていてくれ』と》
そう言うと、イグノーさんの体は完全に光と共に消えた。と同時に、辺りの景色がもとの瓦礫の牢屋へと戻る。
真っ暗な夜空は重く垂れ込めた曇り空へと戻り、ユウリの足元には最初に見た骸骨と杖が転がっている。
まるで、夢でも見ていたかのようだった。
「去り際にずいぶんと重大な情報を残していってくれたな」
一方で、余韻に浸る気分を台無しにするセリフを吐くユウリ。でも確かに、不死鳥ラーミアを甦らせるには、あと五つのオーブが必要だという、この上なく大事な情報を手に入れた。そして、そのオーブを狙う魔の者ーーおそらく魔王軍のことだろうーーの存在も。
「最後の伝言、カリーナさんに伝えなきゃね」
無実の罪で牢に入れられたことを嘆くどころか、彼女の安否をただ心配していたイグノーさん。想い合う二人の気持ちを考えると、胸が苦しくなる。
それでも、あの言葉だけは、どうしても伝えなければならない。
「そういえばユウリ、あのランプはどうしたの?」
「!!」
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