失われし時の復讐者
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い!!」
勇者の剣を抜きもう一人の自分にジュイネは斬り掛る。
「ぉおっと??、危ないじゃないか。───忘れないでくれよ、“お前”の仲間達は元々“僕”の仲間だぞ。それに、資格が無いというなら“お前”にも??勇者を名乗る資格は無い!!」
魔王の剣で斬り返しジュイネの左肩に傷を負わす。
「くっ、そんなの分かってる。だけど??これは僕の“勇者としての罪”だから、そこから目を背けるわけにはいかないんだ!」
「大層な心掛けだ??流石は罪深き勇者様。だがそれが何になる? 貴様が罪と向き合っている振りをした所で、同時に世界を救い直した幸せを噛み締めている??矛盾しているじゃないか。本気で自らの罪と向き合うなら??存在ごと消えろ。“俺”を、無かったことにしたようにな!!」
「(存在ごと、消える───そうか、“彼”はその感覚を、次元の狭間を彷徨い続ける中で味わっていた。当の僕は、元の世界での犠牲を無かったことにして、勝手に満足していたんじゃないのか。存在を消されたもう一人の自分の痛みも、知らずに)」
茫然自失で両膝をつくジュイネへ、容赦なく魔王の剣を振りかざすもう一人のジュイネ。
「───??やめなさい、ジュイネ。あんたのその痛みは??十分伝わったわ」
「そうです??もうこれ以上、ご自分を傷つけるのはおやめ下さい」
魔王の剣を杖とスティックでバリアを張り受け止めるベロニカとセーニャ。
「判るはずないよ、ベロニカ。僕が??俺がどんなに絶望したか。君が死んだ時も、君が死なずに済んだ時も、見ている事しか出来なかった俺の痛みなんて。確かにソイツは、俺がしたかった事、出来なかった事を“した”さ。けどね、“それ”が“間違っている”と分かった以上、もう一人の“俺”を野放しには出来ない。俺が復讐者となって??それこそ魔王となって、存在ごと消すしかない」
ギリギリと魔王の剣の重みが増し、ベロニカの杖とセーニャのスティックに亀裂が走る。
「だったら、あたしの存在も消しなさい。罪を一人だけ背負った勇者が消えるなんて、理不尽でしょ」
「ジュイネ様と、お姉様だけを先へは行かせません??私も共に、参ります」
「(ベロニカ、セーニャ、ダメだそんなこと───)」
「あぁ??もう、俺の愛しき“元”仲間達??。君らはこの世界の新たな脅威として君臨する魔王としての、俺の下僕になっていればいいんだよ。今はまだ、眠っているといい」
魔王の剣に浮き出ている眼が妖しく濃い紫の光を放ち、ベロニカとセーニャの意識を失わせた??かに思われたが、ベロニカは苦悶の表情を浮かべながらもすぐに意識を取り戻し、震える足で立ち上がる。
「ベロニカには??魔王の放つ不気味な光が効かないのかな?
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