第二十九章 遥か遠い時代のお話
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ではあろうが、同時に、最初から抱いていた疑問が自己内において再定義されることにもなった。
「そもそも、ここまでして宇宙の延命は必要なのか。結局は、地球に発生した人類のためだけだったのではないか」
その人類も、いまやどこにいるというのだ。
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神は、一つの賭けをすることにした。
人工惑星管理のために、何体かの生体ロボットが存在するのであるが、それらに疑似人格を与えたのである。
神の意思を極端に分割させた上で、ある二体へと流し込んだのである。
要は、化学反応を見ようとしたのだ。
延命を望む者と、望まない者という、人格同士をぶつけることで。
結局、なんにも起こらなかったが。
一憶年すらもさほど長い時ではないという、ほぼ無限の感覚の中を、これまで存在してきたのだ。
延命を望む側にとっても、なにを犠牲にしても守るべきものではなかったのだ。宇宙という存在は。
これはほぼ、神の予想通りのことでもあった。
どうであれ、結果を見届けるくらいはしよう。
今回の、ついに西暦2000年を突破した仮想世界の。
もう、宇宙の寿命は、ほとんどないのだから。
あと80億年ほどしか。
もしも、また失敗したら……
文明が滅んだり、望む方向性に進まず、やり直すことになったならば……
あと一回、無理しても二回しか、もう機会はないだろう。
ただ、神がそれを語るのもおかしな話だが、そうなったならばそれは運命。
終焉の時まで、眠っていればよいだけだ。
ただ、神は一つ、読み違えていたのである。
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便宜上、延命を望む側を白、としよう。
望まない側を、黒、としよう。
(ああ……ここで仮定するまでもなく、もうそうなっていますね。)
黒の意思は、宇宙の滅びを自然任せにすること、ではなかったのである。
むしろ積極介入して、能動的に破壊すべしという考えだったのである。
そうした思考に至った理由については、作り主である神自身も、最初は理解出来ていなかった。
科学の産物である、AIには。
黒の意思がそう至った理由とは、現在稼働している仮想世界の前提条件が、魔法の存在する世界であるためだ。
「奇跡」が現実世界にフィードバックされること、その可能性を不安視したのである。
荒唐無稽とは理解しつつも、ゼロとはいえないその可能性を。
神が作り出した白と黒は、あくまで思想の対立のため分けたに過ぎず、互いを攻撃することは不可能だった。
二人は議論で戦うしかないわけであるが、当然、お互い相容れられるはずがない。
黒はいつしか、議論をする気すらなくしていた。
白と離れた。
いつかくる時
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