第二十九章 遥か遠い時代のお話
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あろうし、と発明者であるグラティア・ヴァーグナーも、割り切っていたのかも知れない。
得られる効果だけを利用しようと。
なにかが、未来にもたらされればよい、と。
しかし、それどころではなかった。
仮想世界内で陽子を完璧に再現したつもりであった世界において、解明されていない陽子運用の関わる技術を使おうとしたものだから、処理が破綻し、無限空間記憶層が消滅してしまったのだから。
何千年も前に作られた技術の、これは根本問題であり、惑星の意思、神、がどう内部修正を試みようとも、この不具合を覆すことは出来なかった。
仮想世界がいずれ、その解決策すらも出してくれていたかも知れない。そう考えると、時を急がせたあまり世界を滅ぼしてしまったことは、なんとも皮肉な結果であった。
だが起きたことは起きたこと。
仮想世界が完全に消去されたサーバを、放置していても意味がない。
神、各惑星のAIは、新たに仮想世界を構築すべく動き出した。
それにはまず再稼働が出来ないことにはどうしようもないのだが、やがて一つの事実が導き出された。
地球創生にまで時代設定を遡らせることによって、サーバつまり世界が正常稼働することが。
こうして各星系に散ったサーバは、地球の創生からの歴史を作ることになるのだが……
無限空間記憶層を利用した各人工惑星ごとの通信で互いに連係を取りながら、新たな仮想世界を作り出していくのであるが、一基、試験的に時の流れを僅か早めたところ、やはり世界は消滅してしまった。
つまりは、今後、仮想世界を再構築し、人類を誕生させるためには、現実時間での46億年が必要である、ということだ。
神、つまり人工惑星を管理するAIにとっては、長い時間ではない。
しかし、宇宙延命の技術を得るのが目的ということを考えると、絶望的な状況であるといえた。
何故ならば、宇宙そのものに寿命があるためだ。
新技術を開発すべきか、各惑星のAIはそこで初めて、地球に対して思案の要請を出した。
だが、どうしたことか。
地球からの返答は、一切なかったのである。
各惑星に、地球へと戻るための機能、装置はなく、配置された各星系の公転軌道を周り続けるしかなかったのである。
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それからさらに、無限にも等しい時間が流れる。
あくまでも人間にとって無限という比喩であり、そこに人間は一人もいないのだから、おかしな前提ではあるが。
遥かな昔、超次元量子コンピュータを積んだ人工惑星は、全十五基が地球から放たれた。
だがこの時点で稼働しているのは、ただ一つだけであった。
残りの十四基は、数十億年という規模での早いか遅いかの違いこそあ
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