第二十九章 遥か遠い時代のお話
[6/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ないうちに、仮想世界が崩壊してしまったのである。
つまりは、データが消去されてしまったのである。
超次元量子コンピュータを開発した時の実験では、問題なく時間の流れを制御出来た。
だからこそ打ち立てられた、計画であったというのに。
これは一基のサーバだけではない。
各星系に送り出した人工惑星、全体で起こった。
もちろん、バックアップデータも無限空間記憶層に書き出してはいた。
しかし、リストアすることが出来なかった。
それどころか……
各人工惑星の、各仮想世界は、初めて人類が仮想世界を稼働させた西暦3828年から始まっているのであるが、その、起源たる3828年から再稼働させることすらも、出来なかったのである。
十五基ある人工惑星の、各仮想空間。
それぞれ陽子単位で太陽系の空間規模を持ち、現実以上の現実として、地球には人類も暮らしていた。
現実世界の時間において稼働開始から約一万年、仮想世界内に流れた時は数億年、その、積み上げた歴史が、一瞬にして消滅してしまったのである。
8
簡単なことが原因だった。
時の流れを早めた途端に起きた、記録層の障害のことである。
やはり、時の流れを早送りしたことが直接の原因だった。
宇宙空間そのものの内包記録、無限空間記憶層を記録媒体として利用する仕組みであるが故に、現実の時間の流れと同調させていないと動作が破綻してしまうのだ。
情報伝達の緩衝領域であるバッファなどは理論上存在し得ない技術であるのに、バッファが絶対必要な運用をしてしまったために起きた、必然のトラブルであった。
ある程度まで同期ずれが進んだところで、崩壊現象が生じるわけであるが、現実時間での千年という、機械には一瞬、人類には無限、という時の流れの性質柄、臨床テストで欠陥を見抜くことが出来なかったのだ。
後のAIからすれば、作り手である人類が何故設計段階で気付かなかったか、というところであろうが。
9
無限空間記憶層を利用することで、宇宙全域、ほぼ遅延のない通信を行うことが可能である。
光よりも速い物質は、存在しない。
だというのに、何故、非遅延伝達が出来るのか。
エーテルが、正の方向、負の方向、それぞれの時空の歪みに入り込み全方位へと伸びる類の陽子だからである。
縮むことのない物質がすべてに伸びて全域を満たしているため、どこかを押した瞬間、全域において確実な位置ずれが起こる。
そこを読み取るのである。
実は、仮想世界内での、時の加速も、同様の技術である。
欠陥もあろうが、解明改善までは億単位の時間を要するもので
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ