第二十九章 遥か遠い時代のお話
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無限空間記憶層共有《アカシツクレコードシエア》という技術によって、光速を無限に上回る速度での通信が可能であり、充分に現実的であった。
人工惑星は、無人であるため、地球への帰りを考えず、半永久的に宇宙でのデータを集めることが出来る。
人工惑星は、隕石、彗星、などの衝突が計算上起こらないとされる軌道を、永遠に回り続けることになるのだ。
無人であるため、永久稼働に邪魔なだけである酸素などの一切ない、光源も不要なための真っ黒な天体が。
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人工惑星は、適度な重力を発生させるために、かなり大きな規模で建造がされている。
表面積が、地球の衛星である月の四分の一ほどもある。
搭乗者というべきか住民というべきか、とにかくそうした生物は存在しない。
永遠にデータ収集させる目的で飛ばされた人工天体だからである。
ただし、有事の際の汎用性を考えて、建物が作られている。
山々、森林、湖、砂漠なども作られている。
あくまで見た目だけであり、生物にとって死の世界であることに変わりはないが。
想定する有事とは、様々である。
太陽系外文明圏との接触時に、地球という存在を知らしめるため。
地球になにか起こり亡命、漂流してきた者を、救済するため、など。
仮想世界用のサーバとは別に、人工惑星自体にも制御用の超次元量子コンピュータが存在する。
陽子再現理論によるソフトウェア上の脳味噌が、一種AIとして制御系への指示を判断している。
このAIこそが、惑星自身の意思というならば意思なのであろう。
神と呼ぶならば神なのであろう。
時が流れて他が朽ちていくほどに、より神へと近付くのだろう。唯一絶対を神であるとするならば。
現実世界には、物理において様々な制限制約があるが、仮想世界においてはすべての物資をフラグ一つ立てるだけで生み出すことが可能である。
現在はまだ慣らし運転というべきもので、物資も、時の流れも、なにも手を加えていない状態であるが、いずれは神の運用下によって、進化が加速され、地球で待つ人類には、素晴らしい極上の果実が届けられるはずであった。
はずであった、
というからには、そうはならなかったのであるが。
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現実世界において、どれだけの時が流れたか。
各星系へと散らばった、人工惑星内の仮想世界において、いよいよ時の流れが加速されたのである。
最初の、指示の通りに。
あとは加速度的、遠からずに人類は知ることが出来る。
人類の辿る未来の一つを、先に手に入れることが出来るのだ。
終末における、人類のあがきを知ることが出来るのだ。
そうなるはず、であったのだが……
ならなかった。
現実時間で千年も経た
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