第一章
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弘法柿
島根県湯泉津町にの清水大師寺にだ、ある若い男の旅人が来た。そして寺の中に実っている柿達を見て唸った。
「これはまた」
「美味しそうですね」
「はい」
若者は丁度自分の傍にいた寺の僧侶に答えた。
「凄く、実は僕は柿が好きで」
「そうですか、ではお一つどうですか?」
僧侶は若者ににこりと笑って答えた。
「柿を」
「いいんですか?」
「私達も食べていますし置いていますと」
柿達をというのだ。
「熟れて落ちてしまって」
「それで、ですね」
「烏が食べればまだいいですが」
「落ちて腐っては」
「勿体ないですね」
「そうですね」
「それよりも食べられるなら」
それならというのだ。
「それに越したことはないので」
「だからですか」
「はい」
それでというのだ。
「よかったらです」
「頂いていいですか」
「遠慮は無用です」
僧侶は若者に笑って話した。
「宜しくお願いします」
「はい、それでは」
若者は笑顔で頷いてだった。
僧侶が木からもいだ柿を一つ受け取って食べた、僧侶もそうしたが彼はその柿を食べてそうして言った。
「これは本当に」
「美味しいですね」
「こんな美味しい柿そうはないです」
「左様ですね、実はです」
「実は?」
「この柿は昔はなかったのです」
「そうなのですか」
「はい、この木に柿が植えられたのは」
それはとだ、僧侶は若者に共に柿を食べながら話をはじめた。その話はというと。
遥か昔平安時代の頃だ。大師寺の庭は寂しく寺の僧侶達もこのことを感じていた。しかもであった。
「これも修行とはいえ」
「口にするものがないと餓える」
「流石に餓えるのはよくない」
「村の人達も困る」
寺に何もなくてはとだ、彼等は困っていた。そんな中で。
寺に一人の托鉢僧が来た、その僧侶が来ると。
寺の僧達は貧しい中であっても彼等の食を分けて托鉢を行った。すると。
僧侶は馳走になってから深々と頭を下げて言った。
「このお礼をしたいのですが」
「いえいえ、お礼なぞいいです」
「托鉢に応えるのは仏門の務めです」
「お気になさらずに」
「こうしたことは」
「そのお気持ちにも感じました」
僧侶は礼はいい、またそれも仏門の務めという寺の僧侶達の謙虚さそして信仰を見てそのうえでこう返した。
「ですから」
「是非ですか」
「お礼をしたい」
「そうなのですか」
「そうです、これをです」
托鉢の僧は僧衣の袖からあるものを出した、それはというと。
種だった、その種を出して言うのだった。
「寺の庭に植えさせて下さい」
「それは柿の種ですね」
「その柿の種を植えて」
「そしてですか」
「八年経てば」
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