第一章
[2]次話
広固から
中国に広固という街がある。
中唐の徳宗の頃である、この街から長白山まで教白という僧侶が修行に来ていた。
中年の皺の多い顔立ちの僧侶であり寺でいつも修行をして畑仕事や薪割りでかなり頑健そうな身体つきになっている。
その彼が麓で山の寺の話を聞くとだった。
麓の村人は彼に話した。
「山に入ると鐘の音がします」
「寺のだな」
「それを頼りにしてです」
そうしてというのだ。
「山道を進まれますと」
「そうするとか」
「実に見事なお寺に辿り着けるそうです」
「そうなのか」
「ですから」
村人はさらに話した。
「山に入られますと」
「鐘の音を聞きながらか」
「進まれて下さい」
「それではな」
教白は村人の言葉に頷いてだった。
山に入った、するとすぐにだった。
村人の言う通り鐘の音は聞こえてきた、それでだった。
それが聞こえる方に山道を進んでいくとだった。
実に立派な寺があった、その門のところに行くとだった。
「何か御用でしょうか」
「はい、修行の為にです」
出て来た年老いた僧侶にだ、教白は正直に答えた。
「こちらまで」
「そうですか、ではお入り下さい」
「それでは」
教白はその僧侶に案内されてだった。
寺に入れてもらった、寺は中も実に立派であり。
教白はその見事さに感服した、そのうえで座禅を組ませてもらってだった。
寺の経典も読ませてもらった、そして。
修行と学問に耽っているとだった、僧侶があるものを出してきた。
それは二つの桃であった、彼は教白にその桃達を差し出して話した。
「お腹が空かれたでしょう」
「そういえば」
「はい、ですから」
それでと言うのだった。
「これをお召し上がり下さい」
「その桃達をですか」
「はい、どうぞ」
「言われてみますと」
教白も言われて気付いた、実にだった。
今は空腹だった、急にそう感じた。
「かなり」
「それではです」
「召し上がられますね」
「お言葉に甘えまして」
こう言ってだった。
教白はその桃を受け取ってだった。
まずは一つ目の桃の皮を自ら剥いてだった。
食べはずめた、そして二つ目もその様にして食べたが。
ここで僧侶はこう言ったのだった。
「もうお帰りになられた方がいいかと」
「この寺からですか」
「はい、元おられたお寺に」
そこまでというのだ。
「ここに来られて随分と時が経ちましたので」
「今日来たばかりですが」
「それでもです、ですから」
「もうですか」
「はい、帰られるべきです」
「そこまで言われるのなら」
教白も頷くしかなかった、そうしてだった。
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