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SHUFFLE! ~The bonds of eternity~
第四章 〜魔力(チカラ)の意味〜
その三
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手のひらを魔力で冷却してそれを当ててるだけ。ま、アイス○ン程度の効果しかないけどな」

 稟の疑問に答える柳哉。それを聞いて亜沙の表情が強ばる。

「直接冷やしちゃダメなのか? そっちの方が効果も高いと思うんだが」

「直接は加減が難しいからな」

 冷やした手を当てるのとは違い、直接冷やすとは、つまるところ相手の(この場合は麻弓の)体内に干渉するということだ。魔力制御に失敗でもしようものなら、凍傷どころの騒ぎではなくなってしまう。人間の体というものは中々に繊細なものなのだ。魔力制御には自信のある柳哉だが、流石にそんなに危険な橋を渡る気はない。

「そういうものなのか?」

「ええ。回復魔法でも傷の治療程度までなら大丈夫ですけど、高度な医療用の魔法とかってものすごく難易度が高いんです。使い手も少ないですし」

「ま、そういうこと」

 柳哉の説明にデイジーが補足を入れる。
 と、そこへ亜沙の声が掛かる。

「……ねえ柳ちゃん」

「はい?」

 少し固めの口調に、亜沙の魔法嫌いを思い出す稟。

「言ってなかったけど、ボクのいる所では魔法は使わないでね」

「……理由を聞いても?」

「ボクは魔法が嫌いだから」

「……理由になってない気がしますが」

「とにかくダメなの!」

 この場で唯一、亜沙の魔法嫌いを知らないデイジーがなにやらオロオロしている。

「承諾はできません。必要とあらば躊躇いなく使います」

「ダメったらダメなの!」

 勢い込む亜沙だが、

「魔法を使えば助かる命が目の前にあっても、ですか?」

「! それは……」

 柳哉の、静かだが強い力を持った台詞によって言葉に詰まる。そうだ、などとは口が裂けても言えない。それを言ってしまえば人として大切ななにかを失ってしまう。

「で、でもそんなことそうそう起きないでしょ?」

「そうでもないですよ。起きそうな事も、起きそうにない事も、実際に起きる確率なんてそう変わりはしないですから。事実、」

――父さんが死んだ日の朝、今日そんなことが起きるなんて予想もしていませんでしたから――

 続く言葉に完全に沈黙する亜沙。柳哉の言うことは実にもっともだ。反論したくてもできない。しかしだ、事は自分だけではなく、大切な、大好きな母親にも関わる。
 その場を包む静寂。麻弓ですら不安そうな顔をしている。沈黙する亜沙の表情に何を見たのか、やがて柳哉が口を開く。

「追い詰めるつもりは無かったんですが、結果的にそうなっちゃいましたね。すみません」

 そう言って頭を下げる柳哉。亜沙はまだ無言だ。

「承諾はできませんが、善処はします。亜沙先輩のいる所では何らかの非常時以外、魔法は使いません。そ
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