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向かい合ってくれる人
第一章
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                向かい合ってくれる人
 結城界人は大学に入ってからただ講義に出てだった。
 そして家に帰るだけだった、母の愛衣はそんな彼に言った。
「あんたサークルとかは」
「いいよ」
 黒髪をショートにしていて面長の顔である、黒い目は小さく丸く唇は小さい。背は一七二程で痩せている。
「別に」
「じゃあアルバイトは」
「在宅で出来るのしてるから」
 界人は母に感情の籠っていない声で答えた。
「してるから」
「じゃあお家でなのね」
「アルバイトにゲームに読書があるから」
「いいの」
「別にいいよ、人とは出来るだけ会いたくないから」
「全く。あんたずっとそう言ってるわね」 
 母は細い垂れ目でふくよかな顔で言った、長い黒髪を後ろで束ねている。背は一五二程で胸は大きい。
「高校から」
「あの時からね」
「告白してだったわね」
「振られてね、その相手の娘に学校中に言い触らされて」
「ラブレターのことも告白の時の言葉も」
「それで学校中から三年間言われ続けたからね」 
 淡々と言っていた。
「それまで友達と思っていた連中からも」
「それで人間が嫌になったのよね」
「だからいいよ、誰とも話したくないよ」
 こう母に言うのだった。
「お母さんやお父さんは別でも」
「他の人とはなのね」
「もう付き合いたくないよ」
「じゃあ就職はどうするのよ」
「在宅ワークがあるからね」
 それでというのだ。
「そっちで暮らしていくよ」
「全く。中学まではバスケもして結構人付き合いもしてたのに」
「高校まではね」
 高校でも最初はバスケットボールをしていて部活にも入った、だが失恋のことを部活でも言われて辞めたのだ。
「そうだったけれどね」
「今はいいのね」
「もう失恋も人に言われるのも嫌だから」
「大学で失恋のこと知ってる人いないでしょ」
「それで言われないだけで充分だよ」
 こう言ってだった。
 界人は大学には通うだけでだった。
 日々家族以外とは話さず目も合すことはなかった、だがある日道で財布を拾って交番に届けて家に帰るとだった。
 翌日自分の名前と住所それに携帯の番号を教えていた交番から連絡を受けた、それでこう言われた。
「持ち主の人見付かったんですか」
「はい、それでです」 
 交番の巡査は界人に電話で話した。
「是非結城さんにお会いしてお礼がしたいとです」
「いいです」
 界人は巡査に素っ気なく答えた。
「僕は」
「お礼もですか」
「ただ拾っただけですから」
 財布をというのだ。
「それで届けただけなんで」
「宜しいですか」
「そんなこといいですから」
 こう言うのだった。
「ですから」
「いえ、あちらの方は是非にとです」 
 巡査、若く四角
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