第74話 休暇はあらず
[7/7]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
となくホッとした気分だ。
ブライトウェル嬢は兵長待遇から伍長待遇になった。給与が増えただけで特に変わることなく、いつものように司令部要員に珈琲を淹れ、カステル中佐の指導下で料理を作り、ファイフェルと俺の下で受験勉強している。待機時間中にこっそりとキッチンでダンベル運動しているのを俺は見たが、誰にも言ってはいない。
第八七〇九哨戒隊の面々も昇進はなかった。ただ所属するミサイル艦と駆逐艦が、全て巡航艦にクラスアップすることになった。これではもはや哨戒隊ではなく巡航隊というべきであって、本来なら指揮官であるイェレ=フィンク中佐を大佐に昇進すべきなのだが、未だ罪なき罪は許されないということだろうし、本人達も何故か哨戒隊のままでよかったと喜んでいる。
独立部隊の方ではネイサン=アップルトン准将とクレート=モリエート准将がそれぞれ少将に昇進と国防従軍記章が、他の二人には国防功労勲章が与えられた。勲章に差をつけているのは、昇進の有無の調整を込めているのかもしれない。
地上軍の方は大規模に移動があったとジャワフ少佐から私信があった。彼自身昇進はしなかったが、ディディエ少将は中将に昇進し、星域管区司令官に相当する地位に就いたそうだ。またミン=シェンハイ少将も中将に昇進し、ダゴンやティアマトで失われた地上軍の再編成に駆り出されているらしい。彼らの部下も、エル=ファシル駐留の地上戦部隊が現地に到着したことを受けて順次ハイネセンに帰投している。
第四四高速機動集団隷下部隊の艦長クラスも、それぞれ人事部の持つ功績値によって昇進したり昇給したりしなかったりで悲喜こもごもといったところだが、結局二〇〇人ほどの戦隊指揮官と艦長が部隊を離れることになった。代わりに副長や航海長が内部昇進したり、外部から入ってきたりした。兵員の入れ替えはだいたい三割といったところ。
損傷が激しく動きはするが戦闘行動ができない艦は正式に廃棄が決まり、永遠に失われてしまった分も含めて新造艦と別部隊からの転籍による補充とによって、第四四高速機動集団は再編成されることになった。この戦いで戦場にて失われた艦艇は四一二隻。失われた将兵は四万二三〇名。約半年前の集団結成式に参加した約三〇〇〇名のうち艦長・戦隊指揮官だけで四二一人が冥界の門をくぐった。これが『勝ち戦』とはあまりにも苦い。
そして新しい艦と艦長達が揃い、部隊編制を終えた八月二八日。休暇を終えて部隊に戻ってきた将兵達はまったく変わっていない司令部にケツを叩かれながら、再び宇宙へと乗り出すことになる。
目的地はロフォーテン星域キベロン星系。同盟軍最大の演習宙域がある場所であり、今度は演習査閲を受ける側として赴くことになった。
第四七高速機動集団と一緒に、である。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ