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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第74話 休暇はあらず
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質とはナマモノで、時が経つにつれて経年劣化していくものだ。俺個人としてはそんな資質など端からありはしないと思っているが、少なくとも前世において清廉潔白と呼ばれた政治家や独裁者が、時を経るごとに老醜を見せていく例は枚挙に暇がない。俺自身がそうなることを否定できる要素などどこにもない。

 政治家として生きていく『能力』は生存能力のことだ。ぶっちゃければどんなに節度を曲げようとも、どんなに見苦しくても、生き残るためには何でもやるという行動力だ。裏切りに足の引っ張り合い。もちろん軍だって当然あることだ。だが少なくとも後ろから砲撃した奴は軍法会議にかけられるが、政治家では逆にそれが優れた能力とみなされることがある。そんな能力は俺にはないし、いくら鍛えたところで正面突破以外の戦術をとることは出来ないだろう。

 そして政治家として動き続ける為の『目的』だ。シトレに言うことはないが、俺が軍人になる理由の最大の要因はここ何十年かの平和で豊かな世界の成立だ。その為には回廊の向こうで孵化しつつある金髪と赤毛をどうにかして始末しなければならないが、あまりにも厳しい時間制限がある。当然シトレは知らないことだし、それこそ現時点では誇大妄想ではあるだろうが、『ありうるかもしれない未来』に殆ど沿って歴史が動いている以上、可能性は極めて高いだろう。

「思い上がりの戯言と思って聞いていただきたいのですが、校長は私に『素質』があるから、後は何とでもなるとお考えになっているとしか思えません」
「そうかもしれん。だが、『素質』というよりは『資格』といった方がいいかもしれんが、そういう政治家にあるべき規範を逸脱しているのが、今の自由惑星同盟の政治ではないかね?」
「では伺いますが、その規範を決めているのは誰ですか?」
「……自由惑星同盟市民、といいたいわけかね」
「もっと過激で失礼なことを申し上げますが、ヨブ=トリューニヒト氏の頭角は市民が欲した故に起こったことです。彼自身を利権政治家とか扇動政治家とか批判するのは簡単なことですが、彼自身は民主政治の制度によって支えられているのです。彼自身がどんなに空虚な存在であったとしても」

 逆に言えばヨブ=トリューニヒト氏の頭角は、自由惑星同盟が『平和』な証拠なのかもしれない。毎年のように帝国軍と戦い、膨大な犠牲者と経済的損失を負いつつも、戦闘は辺境で行われているだけで、中核星域で痛い目に遭わなければ分からないというのは言いたくないが、ある意味では事実なのかもしれない。

「それでは我々は国家滅亡の路をひたすらに進んでいると言わざるを得ないのではないかね?」
「一四〇年も国家間全面戦争をしているんです。滅びないと考えている方がおかしいと思いますが」
「考えない方がおかしい、か……しかし結局行きつく先は『イゼルローン』という
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