第74話 休暇はあらず
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のは、貴官のアドバイスがあったからこそだ。ビュコック少将もモンシャルマン参謀長も、君のことを高く評価しているし、頼りにもしている」
「いえ、運が良かっただけです」
「ヤンと同じことを言う。あぁ、そうか。彼の場合も『エル=ファシル』だったな」
口では冗談を言っているが、シトレの顔は先程とは違って全然笑っていない。
「彼にとっては甚だ不本意で不愉快だろうが、『エル=ファシルの英雄』の名前と彼の軍における異質の才幹は、軍にとって貴重にしてもはや欠くべからざる存在だ」
「ええ、小官もそう思います」
「君が優秀な軍人であることは理解している。優れた用兵家としていずれはロボスに匹敵するような指揮官になるだろう……だがビュコック少将も言っていたが、君の精神的骨格は軍人ではない。本質的に政治家なのだ」
シトレの過剰な評価はともかく、その観察眼については評価せざるを得ない。
当然のことながら、彼は俺が過去からの転生者であることなど知る由もない。過剰に同盟びいきな原作のファンであり、同盟びいきのファンが陥りやすい、民主主義政体に対する信仰心と、戦争と原作における政治的な最大の悪役に対する嫌悪感が、行動となって表れているのがシトレの目に留まったのだろう。
「以前にも言ったが、用兵家としての君の才幹より、政治家としての君の素質の方がはるかにこの国では貴重だと私は考えている」
「ヤンが統合作戦本部長、私が最高評議会議長ですか?」
「君がヤンより『軍人としての才幹に劣っている』と言われたことに怒るかね?」
「いいえ」
怒るわけがない。ヤンは紛れもなく天才だ。『もしかしたらありえるかもしれない未来らしきもの』を知っている俗人の一人に過ぎない俺では、到底勝負になるはずがない。
「それ以上に私は政治家には向いていません。性格的に海千山千の相手に権謀術策などできはしません」
「君が向いていないと言ってる軍人ですら、君はこの上なく上手くやっているのだ。政治家だってきっとうまくこなせるだろう」
「校長……この席の話は他の誰かに話すことはないということでよろしいでしょうか?」
「録音録画等はしていないから安心したまえ。出来れば声量は少なめにな」
「ありがとうございます」
俺は小さく頷きながら周囲に一度視線を廻してから言った。
「校長は、校長が政治家にあって欲しいと思う『資質』と、政治家として生きていく技術である『能力』と、政治家として動き続ける為の『目的』をはっきりと分けて理解されていないのだと、私は勝手に考えています」
政治家としての『資質』と言うのは被選挙権とかそういう事ではなく、清廉さや社会奉仕の意識のことだ。シトレとしては、シトレ自身の考える理想の政治家としての資質が俺に備わっていると思うからこそ、盛んに嗾けるのだろう。だが資
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