第74話 休暇はあらず
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混乱になる可能性がある。
『国防委員長』派や統合作戦本部もロカンクール大将を積極的には推していない。それほどまでに人望がないのだ。どうせ三年後にはシトレかロボスのどちらかになると、彼らも理解しているからだろう。
「まぁ私はサイラーズ中将になって欲しいと思っているし、そうなると思っている」
ハイネセン市の繁華街の一角。繁華街にありながらも少し入り組んだ、目立たない場所にあるレストラン『楢の家』。その名の通りに壁も床もテーブルも椅子も全てに楢材を使っている。磨き上げられた美しい木目の床は、素朴なようで品があり、室内も落ち着きと温かみがあって実に居心地がいい……正面に座っているのが、『腹黒い親父』でなければ。
「ケリムで散々世話になったのだから、君も少しぐらい手助けしても罰は当たらんと思うがね」
「……高速機動集団次席幕僚の少佐如きに、できることなどないと思いますが」
「できないじゃなくて、できることを自分で考えて動くべきではないのかね?」
「部下が猟官活動まがいなことをしてるなんて知ったら、ビュコック閣下に見捨てられます。小官はまだまだビュコック閣下から学ぶことがいっぱいあるんです、謹んで『ごめん被ります』」
「もう少し野心があると思ったが、貴官には失望した」
「ワイン片手に笑いながらそう仰られましてもまったく説得力がありません。シトレ中将閣下」
目の前に並べられた店の名にふさわしい豚ハラミのガーリックソテーに、俺はちょっとだけ手を付けただけで胃がもたれてくる。一方で目の前の腹黒親父が平然とした表情でワインを片手に平らげていくので、余計にムカついてくる。
だいたい中将・第八艦隊司令官たる(というより派閥領袖が)人間が、同じ派閥のぺーぺーとサシでディナーするというのはどういうことだ。お礼をといってアポを取った時、いきなりこの店を指定してきたのはシトレだし、つまりは客を含めた店にいる人間に、コイツは俺が目にかけてる奴だと触れ回っているようなものだ。この店のプライバシーポリシーには興味はないが、人の口に戸は立てられない。俺がシトレ派の人間だというのが周知の事実であったとしてもだ。
「長官職については、とりあえずは横に置こう。ヴィクトール」
コンッと音を立てて中身が飲み干されたワイングラスがブラウン・オークのテーブルに置かれる。長身でなおかつ姿勢がいいから、シトレの体がテーブルから生えてきてた大木のような錯覚に陥る。軍人としての迫力以上に、人間の器の差を見せつけているようにも思える。多くの軍人は、このシトレの迫力と有能さに圧倒されながらも、その気さくさと深い配慮のギャップに心酔してしまうのかもしれない。
「エル=ファシルではよくやってくれた。艦隊戦だけではない。地上戦を殆ど行わず惑星奪回に成功した
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