第七十話 詰所はお家その二十九
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「凄い山奥よね」
「そうですよね」
「あそこにも行ったのね」
「あと室生とかも」
「結構色々行ってるのね」
「大宇陀なんか近くで」
奈良県のその場所はというのです。
「又兵衛桜にも行きました」
「又兵衛桜?」
「はい、後藤又兵衛さんがそこまで逃れたっていう」
「あの人大坂の陣で戦死したでしょ」
元々播磨今の兵庫県の人なので知っています、神戸生まれの私にとっては結構憧れる人の一人でもあります。
「そうじゃないの?」
「生き延びたって伝説がありまして」
それでというのです。
「それでそこで桜にまつわるお話がありまして」
「それでなの」
「はい、又兵衛桜っていいます」
「そうだったのね」
「それでそのその又兵衛桜にも行きました」
そうだったというのです。
「南の方は行ったことないですけれどね」
「吉野の方とかは」
「十津川村も」
こうしたところはというのです。
「ないです」
「奈良県は南北で全然違うわね」
「本当に違いますね、北は盆地で南は山ばかりです」
「南は私も行ったことはないわ」
私自身そうです、ここで詰所に着いて自転車から降りました。新一君は自分が先に降りて私をエスコートしてくれました。
私は有り難うと言ってからまた新一君に言いました。
「一度もね」
「そうなんですね」
「ええ、橿原位はあるけれど」
「王寺や御所はないですか」
「そこまではね」
どうにもです。
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