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不可能男との約束
祭の前の静寂
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よっ」

「ともあれ、P-01sに一体何のご用でしょうか熱田様?」

「あん? 決まっているだろうが……今日こそお前に俺のソウルビートを認めさせるために決まってるだろうが……!」

「Jud.非常に理解しやすい目的でした―――では、P-01sは先に帰りますのね」

「待てやおい。いいか? 歌って言うのはなぁ聞き手がいる時に歌えば普段より上手く歌えるっていうロマンが溢れるモンなんだよ。つまりな。俺が言いてえのは黙って俺の歌をきけぇおらぁ!!」

「Jud.では、歌詞は聞きましたので帰っていいですね」

「こ、こら! お前は今のを歌詞にすんのかよ! はっきり言うがてめぇおかしいぜ!!」

「Jud.では、返答させてもらいます。鏡を見たらどうですか?」

お、己……! と思わず憤ってしまいそうになるのを内心で待て待てと自分に抑制を聞かせる。
OK.落ち着け俺。
そうだ俺。解ってるだろ? こいつは悪意なしで毒舌家の女だってことは。なら、こういう風に返されることも想定内だろ? じゃあ、大丈夫だ。俺はまだまだいけるぜ。

「おやおや。では、その程度の事も出来ずに私に挑みにかかってきたという事ですね―――ふっ、ちょろ甘ですね」

「こんちくしょう!」

挑発だというのは解っているが、これに応えなければ逆に聞いてやらないと言われている気がする。
そうだ。逆にこの挑発に答えてやればこいつは俺の歌を聞かざるを得ない状況に持っていけるのではと思考する。
論理的な結論だぜと思う。
ならば実践しろと体に命ずる。リズムや音などはどうするという当たり前の疑問にはこう答える。
そんなもんはそれこそ俺のソウルで刻めと。
だから歌う準備として息を大きく吸い、腹筋に力を籠め、そして。

「待みゃ!!」

思いっきり舌を噛んだ。





目の前でいきなり倒れて蹲る人型をP-01sは冷めた目で見ていた。
この人型とは何回も何故か出くわす。
しかも、その度に歌というには余りにも酷いものを………いえ、アレを歌と言ったら歌に失礼だと思いますし、努力をしている歌手達に失礼ですと思い、歌ではなく呪歌と自動人形的に判断しまた。
そう。
自分は自動人形である。
人間とは違い、血も通っていなければ肉もない。頭脳に当たる頭部も中身は人工物の集まりでしかない。
故に感情も持ち合わせていない。
だからこの人が何故自分のところに来るのか理解できない。
いや、それならば自分が働いている青雷亭によく来る何故か何時も去り際に手を握ってくる客もそうなのだが。
だから、店主と相談してある種の判断を持ってその人の字名を「湿った手の男(ウェットマン)」と名付けたのですが。
おや、私とした事が、考えが逸れてますねと思い、だから問うた。


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