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不可能男との約束
祭の前の静寂
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のだが。
そして酒井学長が言う。
大罪武装に纏わる噂を知っているかと。

曰く、大罪武装は人間を部品にしているものだとか。

正純もその話は実は聞いたことがあるが、それは根も葉もない噂話だと思っている。
確かに人間の大罪をモチーフにして作ったのだから、部品には人間が必要だろうとつなげる事は出来るとは思っている。
でも、だからと言って、飛躍し過ぎだろうと思う。
でもまぁ、そういう風に勘ぐる気持ちと言うのも解る。大罪武装の製造方法が解っていないからである。
作った人は松平元信というのは解っているのだが、彼はその製造方法を明かしていないのである。
だからこそ不安が現れる。
松平元信は今、武蔵が向かっている三河の君主である。とは言っても極東は暫定支配を受けている。だからこそ、せっかく作った大罪武装を各国に渡すことで恭順を示している。
それなのに、そんな所の人間がどうしてあれ程の武装を作れたのかと言う疑問がある。
それは大罪武装を知っている人間なら誰でも抱く疑問であり―――脅威でもある。
大罪武装の威力を知っているからこそ知る脅威だ。こんなものをもしも大量生産されたらどうしようという当たり前の脅威である。
そこまで考え……ふと思考が勝手に暴走している事に気付いて止める。

……そんな事を今、考えても答えは出ないだろうに。

情報がなさ過ぎる。
そして次に酒井学長からの一言。

……こっち側に来て見なよって。

過去を平気で語れる人間になりなよって……。
無理だとは答えられない。だけど、今の自分では難しいだろうとは思う。周りの人間相手にも一歩下がって、躊躇している人間だ。
そんな人間が簡単に語れるはずがない。
それで政治家志望と言うのは自分でも呆れてしまうのだが。
その思いを解ってくれたのか、酒井学長は苦笑するだけだった。その事に今の自分は有難いと思い、ふと口が滑った。

「今日は調べ事があるので、そちらに専念したいと思います」

「へぇ、何を」

「"後悔通り"です。それを調べると、皆の事が解るからと言われて……」

そこまで言った瞬間、変化を見た。
酒井学長が笑ったのだ。
その笑いにえ……と思うが、驚きで口が動かない。
そんな自分に酒井は語り掛ける。

「いいねぇ―――まだまだ迷っているけど、逆に考えればそれはこっちに来れる可能性を示しているという事だよね。良い事だ。トーリやシュウ達、三河と様々な場所が違う理由で祝いという騒ぎを起こそうとしているねぇ。トーリは後悔を抱えたまま、だけど進むことを決意し、シュウはそんな馬鹿を見てきっと戦いを選ぶんだろうねぇ……」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

いきなりの展開に付いて行けない。
そんな自分を酒井学長はただ笑っている。

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