骸骨と姫
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たかったのです。
お姫様の頬を、涙が伝いました。
きっと、いままで本当に怒っていたのはお姫様ではありません。
骸骨こそ、きっとお姫様のことを迷惑に思っていたに違いありません。感情にまかせた理不尽な我が儘を沢山言って困らせました。
ぽつりと力なくお姫様は言いました。
「わたしのこと、嫌いだったでしょう」
「いいえ」
お姫様は息が止まるほど驚きました。
それからまじまじと骸骨を見つめました。
どくどくと心臓が高鳴り、耳にうるさいぐらいです。
「…わたしのこと、嫌い?」
お姫様はゆっくり言うと耳を澄ませましたが、骸骨が口を動かすことも、声が聞こえることもありませんでした。
やっぱり、空耳でしょう。骸骨は喋ることが出来ないのです。声が聞こえるはずはないのです。
空耳だとはわかりつつも、お姫様の目には新しい涙が浮かびました。
それはあとからあとから、零れて落ちました。
随分と長い間、お姫様は骸骨を見つめておられました。
月は夜空に高く輝き、お姫様の吐く息は白くはっきりと闇に目立ちます。
「わたし、知っていたの」
隠していた宝物を優しく眺めるようにそっとお姫様は言いました。
「ドレスも、料理も、王子様のところにあるものと、かわらないことを」
お姫様は産まれてから一度だって、固い生地で肌を痛めることも、料理を不味いと思ったこともありませんでした。ドレスやベットはすべるように柔らかく、料理はいつも温かく工夫が凝らされていました。
この世間から忘れ去られたような塔で、それらを準備することがどれだけ大変なことか。
それが骸骨の優しさだと。
だからお姫様は、他の誰でもなく骸骨の笑顔が見たかったのだと。
お姫様は窓から月の光が射しているのに気がついて、そちらに顔を向けました。
よく、お姫様はその窓から空を見上げておりました。
孤独は寂しいことです。
それでも、お姫様は一人ではなかったから。
月の光は冴え冴えと塔を照らしました。
朽ちた塔は、薔薇の骸を抱えて、深と瞼を閉じました。
息さえ凍るとてもとても寒い朝でした。お姫様を探す王子様達が塔を訪れました。
外壁のところでは、お姫様が乗ってきたであろう馬が木に繋がれたまま不機嫌そうに鼻を鳴らしておりました。
塔はまるで、何十年も人の手が入っていなかったかのように、苔生し崩れかけています。王子様は、焦る気持ちを落ち着かせながら、一足とびにお姫様の部屋まで駆け上がりました。
ドアは開いておりました。
そうして、飛び込んだ王子様は立ち尽くしました。
窓から、朝日が差し込み、ベットの下で寄り添ったお姫様と骸骨を照らしました。霜が降り凍ったお姫様の頬と睫を、朝日はきらきらと輝かせました。
このうえなく幸せそ
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