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骸骨と姫
骸骨と姫
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体どこに行ったのでしょうか。
 お姫様はおそるおそる開かれている門を通ります。
 茶色い植物の残骸はあちこちに転がっており、足の下でかさりかさりと音を立てます。
 まるで見知らぬ廃墟に迷い込んでしまったかのようで、お姫様は少し怖くなりました。
 なにはともあれ、骸骨を探さねばなりません。
 お姫様の足は自然に自室へと向かいます。食堂を通り過ぎ、階段を上り、石の扉を開きました。
 果たしてそこに、骸骨はおりました。
 お姫様のベットに背を凭れ、首を落とし両足を投げ出して座っておりました。それはいつもきちっとしていた骸骨にしては珍しい格好でした。
 お姫様は骸骨を見つけられたことになぜかほっとして、声をかけました。
「ねぇ」
 しかし骸骨は返事をしません。
 お姫様は久々にむっとして、骸骨に歩み寄ろうとしましたが、返事を返されないのが骸骨とお姫様の常であったと思いだして、怒りをどうにかおさめました。
 なぜならお姫様は今や望むものすべてを手にしていて、骸骨はこの狭い塔にひとりぼっちでいるしかないからでした。骸骨はお姫様のご機嫌を取らなくてはなりません。そうすればお姫様も、別に骸骨を連れて行って良いと思っていました。だからお姫様はいつものように癇癪を起こさず、骸骨に話しかけました。
「どう?このドレス。王子様が下さったの。王国中の最高の技術者が腕によりをかけて作ったのですって。この宝石なんて、ひとつで城がたつほど高価なものですって」
 骸骨は、その言葉に悔しがりも、顔を上げてドレスを見ることもしませんでした。
「お城での料理、とっても、とっても美味しかったのよ。舌がとろけるよう」
 お姫様はどうにか骸骨を悔しがらせようと、お城での幸せな話を身振り手振りを加えて話しましたが、骸骨は微動だにしません。
 そこで、お姫様ははっと気づきました。
 骸骨を悔しがらせようなんて気もすっかり吹き飛んで、お姫様は骸骨に駆け寄りました。
「ねぇ」
 お姫様の声は震えました。石の壁で出来た部屋は夜になって気温も下がり、とても寒かったのですが、それは寒さのせいではありませんでした。
 お姫様は膝をついて骸骨を見ました。その柔らかい唇を噛みしめて、長い間、そうして骸骨を見ておられました。
「笑って」
 お姫様はいつかも骸骨にかけていた言葉を、言いました。
 骸骨は動きません。
「ねぇ、笑って」
 それを口にするお姫様にも、もうわかっておりました。
 骸骨は笑いません。笑うことも、もう動くこともないでしょう。
 笑ってと、お姫様はよく骸骨に言いました。
 骸骨は一度も、笑ってくれたことも喋ってくれたこともありませんでした。
 きっと、しないのではなく、そうできないのでしょう。骸骨なのですから。
 それでもお姫様は、骸骨の笑顔がみ
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