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骸骨と姫
骸骨と姫
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すか」
「骸ではなくて…骸骨です。執事なのです」
「そうですか…」
 王子様は悲しそうに目を細めました。
「あとで、ちゃんと弔いましょう」
「王子様、違います。骸骨は執事なのです」
「わかっております。きっと見つけて、手厚く葬るとお約束いたしましょう」
 どうも王子様のいっていることと、お姫様の言葉は噛み合いません。
 骸骨は生きています。ちゃんと生きて、お姫様と一緒に暮らしていたのに…。
 お姫様は諦めて口を閉ざしました。
 そうです。もう外の世界に出るのに、骸骨は関係ありません。
 王子様はどうやったのか、固く茨の絡みついていた正門が片方だけ開かれておりました。
 塔を出るまで、そして馬の背に乗せられて塔を離れる時も、骸骨は姿を一回も現しませんでした。
 王子様のお城は、国境を隔ててとても近いところにございました。
 最高級のお食事に、目も眩むばかりの宝石や虹のように色とりどりのドレスがお姫様を出迎えました。
「まぁまぁなんとかわいらしいお姫様でしょう。滑らかなお肌は冬の水でさらした絹よりもっと白いですわ。後ろが透けて見えてしまうよう」
御髪(おぐし)もとても豊かで金糸のように柔らかいですわ」
「このように大きな瞳は見たことがございません。胸元のブルーダイヤが陰ってしまうほど」
「お口もぽってりと赤く愛らしいですわ。王子様が夢中になられるのも、わかりますわね」
 侍女達はお姫様を口々に褒めちぎります。
 お姫様は着飾った自分を見て目を輝かせます。こんなに美しく装ったことは、生まれて初めてだったからです。高鳴る胸を押さえて、まじまじと鏡を見つめました。
「ねぇ、見て…」
 お姫様はそう言って輝く笑顔で振り返りました。その笑顔は、どんなに高価な宝石よりも、どんなに煌びやかなドレスよりも、一番に美しいものでした。侍女達はほうと感嘆の溜息をつきましたが、お姫様は侍女達をきょろりと見渡すと、すっと笑顔を消して大人しく鏡の前に収まりました。
「姫様、王子様はもうすぐに参ります」
「ええ、そうね…」
 そう答えたお姫様の声は随分力ないものでしたが、侍女達は王子様を待ちきれないのだと思って、元気づけるために更にお姫様を褒めそやすのでした。
「姫。そろそろご準備はよろしいですか」
 侍女の言葉どおりすぐに現れた王子様は、優しく笑いながら注意を引くために開け放たれたドアをノックしました。
「はい」
 お姫様は慌てて王子様に駆け寄りました。
 王子様は小走りに歩み寄ってくるお姫様のあまりのかわいらしさに、頬を染め上げました。
「姫…美しいです。とても」
「ありがとうございます」
 お姫様ははにかみながら頷きました。
「今日は料理人達皆、腕によりをかけてとてもとてもおいしいものを作ってくれるそうです」
「あ
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