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骸骨と姫
骸骨と姫
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様は息が止まってしまいそうなほど驚きました。
「姫!」
 声と共に飛び込んできたのは、お姫様と同じ金の髪に、宝石のような緑の瞳を持つうつくしい王子様でした。
「ご無事でしたか!」
 王子様はベットの影で縮こまるお姫様に近づくと、手を取り優しく抱きしめました。
「ずっとお探ししておりました。まさかこんな僻地の塔に閉じ込められておられようとは…わたしが来たからにはもう、なんの心配もいりません。わたしのお城に一緒に参りましょう」
 王子様はにっこりと微笑みました。
「わたしは隣の国の王子です。王と王妃が身罷(みまか)られたと聞いてから、一人残された姫のことをとても心配しておりました。幼き頃一緒に遊んだことを、忘れておしまいですか」
 そう言われてお姫様は思い出します。お母様とお父様が生きておられた頃、数回一緒に遊んだ、ちいさな心優しき王子様のことを。
「さぁ行きましょう。お城はすぐ近くです」
 王子様は笑顔で促します。
「でも…」
 お姫様は戸惑って、辺りを見回します。
 冷たい石壁はお姫様と王子様をぐるりと囲み、影を作っております。
 この茨に囲われた塔からでられると王子様はおっしゃるのです。
 しかし、どうしてでしょう。ずっと待ち望んでいたことの筈なのに、すんなり「はい」という言葉が出てこないのです。
「あなたを傷つけようとする全てのものからわたしがお守りいたします。それともこの塔に、なにか心残りがおありですか」
 そう言われて、お姫様は考えますが、この物言わぬ塔に心残りのものなど、なにもないはずです。
「身の回りのものはわたしのお城で全て用意させております。どうしても必要なものなら、あとでとりに使いを遣りますから、今は一緒にいらしてください。この寒く冷たい塔で、あなたのお体をこれ以上冷やしてしまいたくはないのです」
「…はい」
 真摯な王子様の声に促されるようにお姫様は返事をしました。
 王子様は大層嬉しそうに微笑むと、お姫様の手を引いて歩き始めました。
 お姫様は手を引かれながら、きょろきょろと辺りを見回します。
 全ての時が止まったような塔に、なぜか後ろ髪を引かれる思いでお姫様は歩きます。
 お姫様はふと、骸骨のことが気になりました。
 いつもお姫様のいるところへ影のように現れる骸骨が、今はどういった訳か姿を見せません。
 それはいけません。あの憎らしい骸骨に、お姫様が綺羅綺羅しい外の世界へ出て行くのを見せつけてやらなければなりません。骸骨が無言で悔しがる様を想像すれば、それはとても面白いものを見つけたかのようにお姫様の胸を弾ませます。
「王子様。骸骨を見ませんでしたか」
「骸骨?」
 王子様は怪訝(けげん)そうにお姫様を見ました。
「いいえ、見てはおりません。この塔に骸があるのですか?使用人で
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