第二章
[8]前話
「詩織が風邪だからかしら」
「心配して?」
「そうかしら」
「お父さん以外には懐かないのに?」
「それでも家族だから」
それでというのだ。
「そうしてるのかしらね」
「そうなのね」
「それでゴン今あんたのお部屋にいるのね」
「ベッドの傍で寝てるわ」
そうしていることを話した。
「そうしてるわ」
「じゃあ起こさないでね」
「それでなのね」
「そっとしてあげましょう」
母はお粥を食べる娘に自分もお粥を食べつつ応えた、そうしてゴンは。
この日ずっと詩織の傍にいた、だが彼女が元気になると離れた。これは他の家族も同じで病気になって寝ていると。
必ず傍に来て寄り添う様に寝た、それは家族の誰でもで。
それでだ、母はある日夕食の時に言った。
「懐かないけれど病気の時は絶対に寄り添ってくれるから」
「家族だって思ってくれてるね」
息子が応えた。
「そうだね」
「ええ、ちゃんとね」
「ゴンも僕達のことを気にかけていて」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「ちゃんとね」
「病気になったら」
その時はというのだ。
「心配して」
「傍にいてくれるね」
「治るまで」
「普段は素っ気ないけれど」
それでもとだ、詩織も言った。
「風邪ひいた時に傍にいてくれるから」
「嬉しいわね」
「私もね」
こう母に答えた。
「そうよ」
「そうだな、ゴンは不愛想でもな」
父も言った、今日も仕事が終わってほっとしたうえで夕食を食べている。仕事は肉体労働で今は管理職だ。
「いい奴だ」
「そうね、何かあったら寄り添ってくれる」
「そんな奴だ、だったらな」
それならというのだ。
「俺達もな」
「ゴンを大切にしていきましょう」
「そうしていこうな、家族としてな」
「これからもね」
今はリビングで窓の外を見ているゴンを見て夫婦で話した、ゴンはこの時も無反応で食後父のところに来て尻尾を振ったが他の家族には無反応だった。
だが一家四人でそんなゴンを見て笑っていた、彼がどういった子か完全にわかったので。それでそうしたのだった。
懐かない犬でも 完
2022・7・28
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