第二章
[8]前話
「いい子よ、白い雄よ」
「犬はそうね、けれどね」
「猫は違って」
「すぐにあれしろこれしろで」
今はクッションの上に丸くなって寝ているシロを見て話した。
「無視したら噛んだり引っ掻いたりで」
「暴力振るってくるのね」
「そうよ、ご飯頂戴とか遊んでとか」
「そんな娘なのね」
「そう、それでこの娘インスタに撮ってるけれど」
シロを見続けつつさらに話した。
「撮りたい感じにはね」
「撮れないの」
「それどころか撮ろうとしたら」
その時はというのだ。
「怒るのよ」
「撮られるの嫌いなの」
「そうなの、本当にね」
こう言ってだった。
桜はスマートフォンを出した、そうして。
シロを撮った、すると。
これまで寝ていたが顔を上げてだ、怒った顔で鳴いてきた。
「ニャア」
「この通りよ」
「さっきまで寝てたのに」
「それがよ」
「すぐに起きてなのね」
「寝ててもね」
それでもというのだ。
「起きてよ」
「文句言ってくるのね」
「これが猫よ、けれどね」
笑ったままだ、桜は紅葉に話した。
「一緒にいたら楽しいし退屈もね」
「しないのね」
「寂しいなんてね」
「思わないのね」
「シロが来てから」
まさにその時からというのだ。
「一度もね」
「なかったのね」
「ええ、だからこれからもずっとね」
「その娘と一緒にいるのね」
「そうするわ」
自分のところに来たシロの頭を撫でて言った、すると。
シロはさっきは怒っていたが今は喉を鳴らした、桜だけでなく紅葉もそんな彼女を見て目を細めさせた。
桜は結婚して子供が出来てもシロと暮らした、時々彼女を連れて実家に帰って親兄弟と合わせたりもした。そうして彼女との生活をずっと楽しんだ、しかしシロはずっと我儘でインスタの画像を撮ると怒った。そのことは変わらなかった。
猫とインスタ 完
2022・7・28
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